*
「おおナイシュ」
「結局…いいのか」
「まあまだちょっとビビッてるけど…いっスよもう」
日が変わり、何の心境の変化か、火神が2号を避けなくなった。
鳴き声だけでボールを投げ飛ばしていたぐらいだったが、今も多少怯えているものの、ほぼ本調子で練習が出来ている。
遥の隣で尻尾を揺らしながら練習風景を眺める2号は、さながらもう1人のマネージャーだ。
「それはそうと今のはパスもありだったわよ!まわり見てね」
「ウィース」
「わふっ…」
「2号呆れてる?」
そんな今日は、彼のために作ったユニフォーム御披露目の日でもある。
カントクと2人でサイズを測り型を作り、ミシンもフル活用で忠実に再現した衣装だ。
早速2号に見せると、頭の良い彼は嫌がることなく足を通してくれた。
ますます黒子に似た気がして、カントクと遥は顔を見合わせて思わず吹き出す。
「何それ?」
「新入部員だしねっ」
女子2人の楽しそうな様子に気付いた日向にそう返したカントクは、続いて遥に向かって腕を突き出した。
「あとこれも!」
その手には、2号に着せたユニフォームと同じ柄。
大きさは犬のものより大きい。
「リコ、これ…」
「遥だって誠凛の部員だもの。専用のユニフォームがあってもいいじゃない」
「作ったの?私の分も」
「作ったの。遥は誠凛の…ウチのマネージャーなんだから。嫌とは言わせないわ」
「……………うん」
名前入りのユニフォームを受け取り、何かに耐えるように頷いた遥の頭に大きな手が添えられる。
居合わせた日向が慰めてくれているのだろうと分かった遥から、小さく笑いが漏れた。
「ふふ…リコも順ちゃんも大好き」
「!?」
「私も遥だぁいすき」
「わんっ!」
カントクが遥に抱きつき本格的に騒ぎ出したところで、他の部員達も何事かと駆け寄ってくる。
優しい仲間達に支えられ、やっと心も追いついてきた矢先、違うところから新たな過去が近付いてきたことに遥はまだ気付いていなかった。
END
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