翌日も秀徳との合同練習だったが、当然の如く遥は火神と別メニュー。
そのおかげで後輩と少し仲良くなれたような気はしたが、逆に遥の中に曇天が広がるようにもなっていた。
その隙間からいつ稲光が覗いてもおかしくはないだろう。
そしてそれに拍車をかけるような現実が表示された携帯をそっとポケットへ滑り込ませ、遥は静かに外へ出た。
日が落ちて薄暗いものの、羽織った薄手のカーディガンが肌に纏わりついてくるような暑さは夏らしく重たい。
「あれ、もしかしなくても遥サン?」
「高尾くん」
人懐っこい笑みを浮かべた高尾が、ビニール袋片手に暗闇を歩いてきた。
どうやらコンビニまで行っていたらしい。
「今日もずっと火神についてたんすよね?」
「うん。そのせいか全然会わないよね」
「そーっすよ!ウチも成長したよってとこ、遥サンに見てもらいたかったのに。口には出さなかったけど、練習中真ちゃんも遥サンのこと捜してましたから」
わざとらしく口を尖らせてみせた高尾に、遥はくすりと笑いながら謝罪した。
盛り上げ上手なムードメーカーは、この夜の暗さも吹き飛ばしてくれるようである。
「あ、信じてないっしょ。オレ本気で言ってますからね」
そう言った高尾の双眸が、かつて試合で見たときのような輝きを見せた。
伸ばされた腕に容易く捕まった手が、逃げられないように絡め捕られてしまう。
「あの噂から注目し始めたけど……実際会ってみて、やっぱお近づきになりたいって思ったし、出来れば秀徳で出会いたかったって思った。オレの中で遥サン、ちょーVIP待遇なんで」
「それはごめんの方がいい?それともありがとう?」
「んー、出来れば頭ポンポンからのほっぺチューで」
「うーん……」
「………その反応ちょっとヘコむんですけど」
諦めた様子で肩を竦めてみせた高尾は、そう言えば、と話を切り出した。
「どっか行くんすか?」
「ちょっと外の空気吸いたくなって」
「向こうコンビニとか自販機はあるけど暗いし、ついてきましょーか?」
「ううん、大丈夫」
申し出を礼と共に断れば、高尾は気にした様子もなく納得したようだ。
そんな他校の後輩との一時の休息を楽しんだ後、遥は更に歩みを進めていった。
閑散とした暗闇は恐怖心を煽るだけでなく、内側から壊さんばかりの圧力を感じさせるようである。
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