期末テストを無事終え、誠凛バスケ部は、創始者である2年生木吉も復帰し敗戦のショックから立ち直りつつあった。
そして───夏休み。
いよいよウインターカップに向けて、本格的に動き始めようとしていた───。
「今年は夏休みの始めと終わり、海と山で合宿2回よ!」
部活後の熱気のこもる体育館でカントクに突き付けられたまさかのW合宿に、バスケ部の面々は一気に真っ青になった。
去年経験済みの2年生はよく覚えているだろうが、合宿はけして楽しいだけのものではないのである。
今年はそれが2回───忘れられない夏になるに違いない。
「合宿は主に、予選およびこの前の練習試合で感じた弱点克服が目的よ。さらにウチは少人数だから体力向上は不可欠。通常練習は今まで以上に走るわよ」
掲げられた明確な目的は言わずもがな。
そして誠凛の決定的な弱点の1つは、これも言わずもがな層の薄さ。
忘れられない夏どころか、生死の境を彷徨う夏になる可能性も浮上してきた。
しかし、そこまでして皆が欲しいモノがあるのである。
「夏休み明けたらウインターカップ予選はすぐそこだ。この夏休みをどこまで有効に使えるかが大事だ。気合入れていくぞ!!」
ウインターカップでの確かな勝利、日本一の座。
主将が言う通り、これを手に入れるには数々の努力、苦労は勿論、数々の犠牲が必要となってくる。
もう何度もこの状況を経験しているものの、マネージャーの遥もどこか落ち着かない様子だった。
のし掛かるのはあの2文字だけではない。
「以上!解散!!」
「「っつかれしたぁ」」
気を引き締めたところで、日向の号令により今日の練習は終了となった。
1年生を中心に片付けが始まる。
「そだカントク。武田先生が練習後来てくれってさ」
「あ、そう?じゃゴメン、先あがるわ。おつかれー」
「待ってリコ。私も話あるから行く」
急いで愛用品を片すと、自身の鞄を引っ掴んだ遥は小走りでカントクのもとへ駆け寄った。
ふと、近くにいた伊月と目が合う。
「…後でメールするね」
「分かった」
こくりと頷きあってから、遥はカントクと体育館を後にした。
これから遥は、重大な任務をこなさなければならないのである。
「アイコンタクトなんかしちゃって、相変わらず仲良いわね、伊月君と」
「俊もそう思ってくれてたらいいけど」
着々と歩みを進める先は、顧問が待っている職員室。
遥は溜め息を吐くと、おずおずと切り出した。
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