これが『黒子のバスケ』。

これで青峰を打ち負かし、桐皇を倒す。

強い眼差しのままの黒子は、お得意のイグナイトパスを繰り出そうと構えた。


「悪ーな。テツのパスは全部知ってる。ミスディレクションのタネもな」

「……!」


彼の特性、そして彼の技を『知っている』のは、今の仲間だけではない。

かつての仲間がそうであるように、かつての相方である彼が───


「何よりオマエのパスを一番とってきたのは誰だと思ってんだよ?」


青峰大輝が『知らない』はずなどないのだ。


「駄目…!」

「オマエのパスは通さねぇよ」


黒子の手を離れたボールは、吸い寄せられるように青峰の手に。

神出鬼没な彼が放つこの凄まじいエネルギーを持つパスは、誰にも邪魔されることなくコートを突き抜けるはずだった。

しかしどんな勢いだろうと軌道だろうと、取り慣れている青峰からすれば、大したことのないただのパス、むしろいつものパスだったというわけだ。


「そんな……!!」


彼はボールを手にするや否や、伊月を越え、日向を躱し、水戸部を抜き去る。

電光石火のような速さにフォームレスな動きを組み合わされては、誰1人動けぬままだ。

速い、そして巧い。


「マジかよ3人抜き!?まさか1人で…」


トドメは最後の砦、火神と黒子の上からのダンク。

あっさり決まってしまったゴールに、開いた口が塞がらない。

『キセキの世代』のエース、そして桐皇エースでもある青峰大輝は、それこそ瞬く間、ものの数秒で見事なまでの5人抜きを披露し、誠凛を完封してしまった。

敵味方関係なくコート内の選手たちは勿論、会場内全てが呆気に取られてしまっている。


「悲しいぜ…最後の全中からオマエは何も変わってない。同じってことは成長してねえってことじゃねぇか」


青峰の指摘は、研ぎ澄まされた刃の如く突き刺さった。

黒子の心にも、そして遥の心にも。


「やっぱ結局赤司が言った通りかよ…」


これ以上言わないでほしい。

これ以上抉らないでほしい。

耳を塞ぎたくなるような言葉は真実であり、また同時に現実でもあった。


「おまえのバスケじゃ勝てねえよ」




END

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