先程の休憩中のミーティングで納得した通り、黒子は後半ベンチスタートだ。

こうなると戦力は落ちてしまうわけだが、誠凛にはあの黄瀬と緑間に競り勝った火神がいる。

彼が現状唯一キセキに対抗出来る存在であり、突破口を抉じ開ける存在と言えるだろう。


「うおっ、開始早々青峰だ!!」


ボールは桐皇エース・青峰、立ちはだかるのは誠凛エース・火神。

あの『キセキの世代』のエースでもあるスコアラーの青峰に、大型ルーキー火神はどう出るのか。

観客もコート内のメンバーも、不安と同じくらい彼に期待しているはずだ。

勿論それは、コート横で見守る遥も同じだった。


「………っ!」


だが───あの火神をあっさり抜き去った青峰は、続いて立ち塞がるヘルプを物ともせず急停止すると、フェイダウェイを決めてみせた。

勿論後ろから駆けてきた火神も止めようとしたのだが、時既に遅し。

緩急の振幅、敏捷性が桁違いである。

続いてリスタートの速攻は誠凛が得意とするところだが、


「ぶちこめェ火神!!」


青峰は容易く追いついてみせると、火神の手からボールを叩き落とした。


「なーにやすやすと速攻とった気でいんだよ?させねーよ」


自身に追い付かせないだけでなく、他のキセキと渡り合った火神をあっさり突破してしまう彼からはまだ余裕が感じられる。

そんな様子を固い面持ちで見ていた遥は、突如空気をぶち壊すような暢気な意見を口にした。


「火神くんって本当にジャンプが好きなんだね」

「…は?」


しなくてもいいのにダンクに持っていこうとするし、本当によく跳べるよね───そう続けようとしたところで、遥は慌てて口を噤む。

よく思い出せ、さっき火神はどこで踏み切っていた?


「やっぱ性に合わねーわ。生真面目なバスケは」


青峰の雰囲気ががらりと変わった。

少々残念ではあるが、どうやら彼は悠長に思い出す隙を与えてはくれないらしい。


「……大輝…!」


青峰の操るボールが、ファンブルの如くするりと軌道から抜ける。

かと思いきや、次の瞬間彼はテレポートしたかのようにそのボールの元にいた。

行っていることはただのドリブルなのだが、それは手品よろしく火神を攪乱し、彼の重心ごと手中にしてしまう。

更に、ヘルプを無視して飛び上がってゴール裏から放られたボールは、さも当たり前のようにネットを潜っていくではないか。


「すご…」


何がどうなったのか見えないし、分からない。

常識が全く通じない、変幻自在な路上バスケ───それが青峰大輝のバスケなのだ。


「つくづく『キセキの世代』ってのはふざけた奴ばっかりだ」


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