「1―B、5番!火神大我!!『キセキの世代』を倒して日本一になる!」


遥は密かに口角を上げた。

屋上の柵の上から放たれた校庭中に響き渡る宣誓に、朝礼待ちの列は一気に騒がしくなる。

一方、屋上には妙な静寂が訪れてしまっていた。


「次は…?早くしないと先生来ちゃうよ」


リコが急かすも、黙り込んでしまった1年生は動き出しそうにない。


「ホントに時間ないから、やる子はちゃちゃっと覚悟決めてね」


そう言った遥の目に、いつの間にか姿を眩ませていた黒子の姿が映る。


「あ、テツヤ」

「すいません。ボク声張るの苦手なんで、拡声器使ってもいいですか?」


突如リコの真横に現れた黒子の手には、彼が言う通り拡声器が握られていた。


「…いいケド」


許可も下りたため、ノイズを響かせながら何処からか調達してきた拡声器を構える黒子。

どんな目標が飛び出すのかと、屋上に緊張が走ったそのとき───


「コラー!!またかバスケ部!!」

「あら今年は早い!?」


怒り心頭な様子の教師が屋上へ乗り込んできた。


「お説教だー!」


遥の嘆き通り、黒子の宣誓は中止、前科持ちということもあり全員正座で説教を食らうこととなったのだった。









翌朝、遥が教室へ足を踏み入れると、伊月以外のクラスメイトが窓際に集まり何やら騒いでいた。


「おはよ、遥」

「あ、俊おはよう。何かあったの?」


返事はせず、伊月は遥の背に手を添えて窓際へと誘導する。


「あれが理由」


目の前の伊月の切れ長の瞳が、優しく細められた。

促されるまま外へ目をやると、校庭にでかでかと記された『日本一にします。』の文字。

何が起きて誰が書いたのかがすぐに分かった遥は、嬉しそうに伊月を見る。

伊月は全てを察しているかのように、遥の頭を撫でた。


「ようこそ、誠凛バスケ部へ」


残りの部員は屋上宣言を当然禁止され、部活動時間の声だしとしてやり15人・6人と絞られ───名前を書き忘れた彼の校庭文字は、謎のミステリーサークルとして誠凛高校七不思議の1つとなった。


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