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「すいませーん」
動けない火神を引き摺るように連れた誠凛一行は、会場近くのお好み焼き屋へと足を踏み入れた。
広々とした店内は賑わっているものの、なんとか全員入れそうである。
「ん?黄瀬と笠松!?」
「ちっス」
「呼びすてかオイ!!」
火神の声に目を向ければ、テーブル席で食事にありついている他校の主将とエースの姿。
先日練習試合で戦ったばかりの笠松と黄瀬である。
「あ、遥センパーイ」
「涼太だ、久しぶりー」
満面の笑みで手を振る黄瀬に手を振り返しながら、遥は奥の座敷へと移動した。
16人の大所帯、この座敷は12人席ではあるが、詰めればどうにかなるだろう───ということで、黒子と火神は海常組と相席である。
とりあえず飲み物と、空腹の胃を満たすためのお好み焼きと。
手早く注文を通せば、もう宴会モードだ。
「コーラこっちー!」
「オレンジー」
「ウーロンハイ──」
「誰だ酒頼んだバカは!?換えてもらえ!」
わいわいがやがやと騒がしくボケとツッコミも入り乱れ、全員にグラスが行き渡る。
大活躍だった火神と黒子は少々遠い席ではあるが、勝利の祝杯を───
「よし、じゃあ…カンパー……」
「すまっせーん。おっちゃん2人空いて…ん?」
と、全員の動きが止まる。
店に入ってきたオレンジジャージの2人は、つい先程まで同じコートにいた2人だ。
「なんでオマエらここに!?つか他は!?」
よりによってこのタイミングで秀徳ルーキーたちと遭遇するとは、計られたものとしか思えない程見事なタイミングである。
この店内には帝光出身の黒子だけでなく、あのキセキの世代の1人・黄瀬もいるのだ。
「あれっ?もしかして海常の笠松さん!?」
「なんで知ってんだ?」
「月バスで見たんで!!全国でも好PGとして有名人じゃないすか」
皆がこの仕組まれたかのような偶然に驚いている最中、笠松がいることに気付いた高尾は疲労や敗北を感じさせないテンションで言った。
確かに海常主将・笠松は月バスに載るレベルの好PG、有名人なのである。
「ちょっ…うおー!!同じポジションとして話聞きてーなぁ!!ちょっとまざってもいっすか!?」
そのまま、笠松を連れた高尾が何故か誠凛陣が陣取る座敷へ移動。
押し詰められた遥たちの座敷の騒がしさとは対照的に、テーブル席の雰囲気は最悪だった。
黄瀬、緑間、火神、黒子。
期待のルーキー勢揃いなのである。
これにはさすがの遥も、そわそわと動揺を隠せないでいた。
そんな遥につられてか、心配性な水戸部もそわそわする一方で、誠凛の女子高生カントクは双眸を爛々と煌めかせている。
「ちょっとちょっと、チョーワクワクするわね!?」
端から見ればかなり興味深い光景ではあるが、遥は胸だけでなく体全体をどす黒い渦が円を描いているような衝動に襲われていた。
自身の後輩でもあるキセキの世代の2人と、彼らを負かした後輩2人が目の前に揃っているのだ。
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