残り9分。

29対48で誠凛19点ビハインド。

誠凛の3Pシューター日向のシュートが決まるも、リスタート後すぐにボールは緑間へ。


「オールコートでボックスワン!?」


その緑間に食らいつく火神は、凄まじい気迫と集中力で粘っていた。

居ても立ってもいられない状況に、遥の肩にも力が入る。

今回の主役プレーヤー、自身の後輩同士の対峙はもう何回も目にしているが、いつまで経っても慣れない緊張感に支配されていた。

緑間か、火神か。

火神か、緑間か。


「火神!!」


秀徳PG、同じ1年である高尾のスクリーンで火神が剥がされる。

その隙に、緑間がシュートモーションに入った。


「今は2対1だぜ!?」

「それでも止める!!さんざ見せられたおかげで1つ見つけたぜ、テメーの弱点!!」


───緑間の弱点?

そう言い放った火神が高尾を振り切り駆け出す。

そして、ボールを放る緑間と共に宙へ。


「距離が長いほどタメも長くなるってことだよ!!」


いくら緑間が優れた選手と言えど、それだけの『力』がなければコートの端から端までの超長距離シュートは不可能。

つまり、通常の倍ものタメが必要不可欠なのである。

それは少し考えれば誰にでも予想がつく『当たり前のこと』だ。

試合を一番近くで見守っている遥は勿論、会場にいる全員の視線を集めている緑間のシュートがリングに弾かれる───


「真太郎のシュートが……」

「うおっ」


が、驚愕も束の間、秀徳の要・大坪がそれを力強く押し込んだ。

相手は東の王者と名高い秀徳高校レギュラー陣、エース以外にも要注意人物がいるのである。

一連の流れを見ていたカントクは何かを悟ったらしく、小金井に手短に指示を出した。


「させるか!!」

「むげっっ」


その直後、レイアップに走る小金井のボールが大坪に叩き落とされ、それが彼の腹部に直撃というアクシデント発生。

知っての通り、ボールはそこそこの重さと硬さを備えている。


「コガくん…」


すぐさま自身の仕事に戻る小金井だったが、見ていた遥が架空の痛みに顔を歪めることとなった。

実際自分の身には何も起きていないというのに、人間の体とは不思議なものである。

気を取り直した遥は肺一杯に息を吸い込むと、それを静かにゆっくりと吐き出した。

試合はまだ終わっていない。


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