「止めるか?ムリだな」
無駄のない素早い身のこなしで火神を振り切ると、緑間はそのままボールを放った。
彼はシュートの腕は勿論、選手として単純に秀でているのだ。
さすが緑間、『キセキの世代』の名は伊達ではない。
「点差が…」
未だ1桁差とは言えども、この1桁はそう簡単に取り返せるものではないと遥は悟っていた。
続いて、黒子と火神の息のあったプレーで緑間を攪乱させにかかるが───
「!?」
何処からともなく現れた高尾にスティールされ、零れ落ちたボールが緑間に渡ってしまう。
「ダメ…!」
───間に合わない。
「おおお、きたぁ緑間2連続!!マジで落ちねぇ!!」
精密で正確、緑間特有の放物線を描いたボールはゴールの中心へ吸い込まれていった。
このまま、ただただ得点を許していくわけにはいかない。
入れられたら、それ以上で返すしか選択肢はないのだ。
いい具合に集中している2年の攻撃で、誠凛もすぐさま追加点をもぎ取る。
「おおお、誠凛もなんとか喰い下がる…!!」
「悪いがそれは無理なのだよ。いくらか返した所でオレのシュートは止められない」
そう言う緑間にまたもボールが渡る。
彼の手から放たれた球体は、現誠凛で一番の高さを誇る、あの火神の上を通過していった。
「うわぁあ、また緑間だ!!」
高い高いループが、たっぷり時間をかけてネットを潜っていく。
遥は手元のシートに視線を落とした。
とうとう、スコアは16対29。
緑間を止められなければ、秀徳はこれからも3点ずつ延々と点を重ねていくに違いない。
日向のシュートで対抗したとしても、とにかく『キセキの世代』を上回らないと誠凛に『勝利』はないのだ。
「……やっぱり真太郎を……」
誠凛の『勝利』のためにはどうしても緑間を───と、悔しげに唇を噛み締めた遥は、続いて視界に飛び込んできた後輩の姿に目を瞠る。
笑っているように見える火神の様子が、いつもと違うように思えたのだ。
雰囲気が鋭いとでも言えばいいのか、強敵・緑間相手に闘志を漲らせているというだけには見えない。
そんなもんじゃねえだろ───この先を示唆するような、誰かの声が聞こえた気がした。
END
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