「あんなパスもあんのかよ!?」


コート内の選手たちは勿論、その場にいた全ての度肝を抜く黒子のパスに、開いた口が塞がらない面々。

海常のときとはまた違うキセキ対決の開幕に、胸を踊らさずにはいられない。


「勝負は」

「これからだろ！」


息の合った黒子と火神。

笑ってみせる緑間。

遥の目に映る後輩たちは揃いも揃って挑戦的で頼もしく、目が離せない者ばかりだ。

２年・３年も目を逸らせない実力者だと分かってはいるが、この試合のカギは間違いなくこのルーキーたちである。


「また真太郎…」


緑間による先制、黒子のカウンターによる火神との連係と続き、ボールは再度緑間へ。


「緑間だ!!また撃つのか超高弾道3P!!?」


が、火神と対峙する彼はあっさりパスを出す。


「…？」


遥は密かに眉を寄せた。

火神がマークについていたとは言っても、彼なら得点出来たはずだ。

努力家でプライドが高い緑間ならば、3Pであっさりと点を返してもおかしくはないだろう───と考えたところで、遥は再度見失いやすい影の方を見た。

神出鬼没な彼は周りに気を配り、味方ですら気付かない程静かに構えている。

この黒子のせいで、緑間は撃てるのに撃てないのだ。


「そっか、テツヤがいるから…」


緑間のシュートは長い滞空時間中にDFに戻り、速攻を防ぐメリットもある。

だが万一外したときのために、残りのメンバーはリバウンドに備えているのだ。

つまり、緑間がDFに戻れるなら、火神が走る時間もあるということである。

戻った緑間の更に後ろまで貫通する、超速攻がカウンターで来る───だから緑間は撃てない。

パスを見せつけるタイミングと判断力は勿論、それを一発で成功させる度胸は認めざるを得ないだろう。

誠凛１年・黒子テツヤは、帝光中にいただけはある百戦錬磨なのだ。


「いやいやいや、そんなんで秀徳抑えられるとか思われちゃ困るなー」


余裕な様子の高尾が伊月を抜き去ったかと思いきや、またもノールックパスでボールを主将・大坪に渡す。

速さだけでなくパス捌きも秀でる高尾は、さすが１年PGといった実力か。


「まだまだこれから…かな」


これで得点は２対５。

が、黒子の中継により軌道が変わったパスが繋がり、誠凛もすぐさま追加点。

王者相手に負けてはいない。

と、そのとき、秀徳の監督が動いた。


「おーい。高尾ー、木村ー、マーク交代。高尾、11番につけ」

「高尾くんがテツヤの…？」


この局面での黒子へのマーク───どうやら高尾はただ者ではないらしい。


「…やっぱねー、こーゆー形になると思ったんだわー。まっ、真ちゃん風に言うなら運命なのだよっ」


マーク交代の指示を受け、黒子の前には秀徳ルーキー高尾の姿。


「オレとオマエ、真ちゃんとアイツがやりあうのは」


彼曰く、共通の友人であるチームメイトの言葉を借りるなら、これは『運命』───その理由は？


　　return　→

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