───が、しかし。

両チーム共一歩も譲らないために、試合はすっかり均衡状態に陥ってしまった。

ベンチから真剣な眼差しを送る遥の手元のスコアシートに、点数の記載はない。


「もう2分…」


かれこれ2分、試合が動いていないのだ。

バスケットの試合は10分×4Qの計40分構成。

つまり、最低3回流れが変わるポイントがあるということだが───逆に言えば、1度持って行かれると一気に相手ペースとなってしまう。

この第1Q、先制点を取った方がモノにするだろう。


「速攻!!」


そのとき、とうとうボールが緑間に渡った。

遥の体にも緊張が走る。


「真太郎…」


頭で分かっていても、遥は心の何処かではそれを待ち望んでいた。

あの緑間が、あの特徴的なシュートを外すはずがない。

過去に何度もこの目で見てきた、彼女も良く知る後輩・緑間真太郎のシュートは百発百中なのだ。


「緑間…!!」


彼から放たれた高い放物線を描くボールは、それは見事にネットを潜り抜けていく。

今試合初得点、しかも緑間の3P。

2分程焦らされた会場が一気に沸き立った。

選手も含め、おそらく会場にいる者で、『キセキの世代』と名高い彼のシュートに注目しない者はいないだろう。


「うわぁあ、きた3P!!」

「なんつーシュートだ!!」

「先制点は…秀徳だ!!!」


秀徳の強大な得点源による先制点。

これで第1Qは秀徳ペース───


「テツヤ…!?」


かと思われたが、リスタートのためにボールを手にしている誠凛ルーキーの姿に、遥は大きく目を瞠った。

そして次の瞬間、黒子が投げたボールがコートをぶったぎる。

味方も敵も、勿論あの緑間をもぶち抜いたそれを受け止めたのは、相方の火神。

これを見越して控えていたらしい彼の周囲には誰もおらず、完全にフリー状態だ。

得意のダンクで即お返しすれば、秀徳に持っていかれそうだったペースの裾を鷲掴む。


「一瞬でやり返したぁ!!?」

「それよりマジか今の!?コートの端から端ぶった切ったぞ!!?」


速攻を返す、リスタート直後の速攻。


「さすが…」


ルーキー2人の活躍に、遥から思わず笑いが漏れる。

それに対し、してやられた緑間は忌々しげに元チームメイトに鋭い視線を向けていた。


「黒子…!!」

「すいません。そう簡単に第1Q穫られると、困ります」




END


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