いよいよ決勝戦開幕。

だがその前に、秀徳ルーキー緑間により、火神は遠慮のない本音を浴びせられる。

情けない試合をする奴と話すことなどない、言いたいことがあるならプレイで示せ───。

元々前半までの出場だったとしても、正邦戦で火神がまんまとしてやられたのは事実だ。


「同感だね…思い出すたび自分に腹が立ってしょーがねー。フラストレーション溜まりまくりだよ。だから…早くやろーぜ」


自分の不甲斐なさを痛感したからこその、どす黒い殺気のような闘志。

彼から迸るそれは目に見えないはずだが、ベンチにいる遥でさえも確かに感じ取れるものだった。


「全部闘争心に変えてテメーを倒すために溜めてたんだ。もうこれ以上抑えらんねーよ」

「……なんだと」


相手は『キセキの世代』が加入した王者、そもそも楽に倒せるとは思っていないが───これは一波乱ありそうな気配である。


「やれるものならやってみろ」


挑戦的なウォーミングアップも終わり、試合が開始された。

ジャンプボールは誠凛ルーキー火神と秀徳主将大坪だ。

そして運良くそれを制したのは誠凛だったが、


「うっわ、スキねぇ〜…」


主導権をものにしようにも、北の王者とはまた違う意味で秀徳には隙がない。


「一本!!大事に!!」

「じゃない!」


コートに目を向けたまま、カントクはベンチで応援に徹する1年の声を否定した。

遥も彼らを見やると小さく頷いてみせる。


「格上相手にのんびり合わせてたら主導権プレゼントするようなもんよ!まず第1Q穫る!そのためには…」


先手必勝ぐらいでないと、王者の相手は務まらないのだ。

それを理解しているカントクと遥のセリフが重なる。


「「挨拶がてらに、強襲ゴー!!」」


PG伊月から黒子、そして火神へボールが渡った。

誠凛ルーキーコンビの息の合ったアリウープだ。


「……!!!」

「なっ…あれは…」


───が、ボールはネットを潜る前に、突如現れた緑間に弾き飛ばされる。


「!!?」

「まったく…心外なのだよ。その程度で出し抜いたつもりか?」


緑間はシュートの精度は勿論、その他の技術も群を抜いているのだ。

分かってはいたものの、やはりそう簡単にはいかないらしい。


「うおおぉ!!」

「アリウープを!?はたき落としたぁ!!」


攻守は交代、続いて秀徳PG高尾のノールックパスから、秀徳チャンス。

それに食らいついた日向がボールの軌道をずらし、今度は誠凛が得点を阻止してみせた。


「外れた!!両チーム譲らねぇ!!」


息をつかせぬ素早い攻防。

誠凛も秀徳も、いい具合に集中している。


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