「だめだ行くな火神!!」
「火神くんストップ!!!」
その意味を察した日向と遥の声が重なったが、時既に遅し。
審判の笛の音が響き渡った。
「OFファウル!!白10番!!」
これで火神はファウル4つ目。
敵ながら、彼の性格も理解した上手いファウルの取らせ方だ。
「うわぁあ4つ目だー!」
「誠凛のスコアラーがファウルトラブル!!」
「まだ第2Qだぞっ!!?」
ファウルは5つでアウト、退場である。
残念だが、この状態の火神を試合に出すわけにはいかない。
「バッカたれ……!」
呆れ返る誠凛ベンチの一角で、遥は妙な緊張感に包まれていた。
誠凛ルーキーの4ファウル。
そしてあの『決断』。
少し早いが、おそらく───。
「大丈夫すよこんぐらいっ!もうファウルしなきゃいいんだろ?いけます!」
カントクのメンバー交代申請を受け、主将相手に抗議の声を上げる火神。
彼の気持ちはよく分かるのだが、遥の予想通り、日向は『決断』を切り出した。
「ま、ちょーどいいわ。オマエと黒子はどーせひっこめるつもりだったからな」
「…え?」
「………ボクもですか?」
当然と言えば当然だろうが、主将の発言にルーキー2人はきょとんとしてしまう。
「最初から決めてたからな。お前ら2人は前半までって」
王者のスカウティングを行ったあの日、勝利のために主将が提案した思い付きがこれだったのだ。
現段階で4ファウルな火神はまだしも、得点に大きく貢献する黒子も、そして例えファウルがなかったとしてもエースとして活躍する火神も、途中交代が決まっていたのである。
「まぁ心配すんな。正邦はオレ達が倒す」
即戦力のルーキーが欠けて、不安がないとは言い切れない。
だが誠凛2年は、カントクとマネージャーも含め、全員『やる気』だ。
「そんななんでだよ…ですか!オレと黒子が前半までって…」
「理由はまぁ2つ…かな。1つは緑間を倒せるのはお前ら2人しかいないからだ」
血気盛んな火神は納得のいかない様子であるが、見方を変えればこれは彼のためでもある。
「もしこの試合に勝ったとして、秀徳に勝つには緑間攻略が必須条件だ。けど秀徳は予想通り、すでに緑間を温存している。消耗したお前らじゃ勝てない」
前回の2連戦がいい例だ。
まして今回は準決勝の後の決勝、しかも相手はあの東京都北の王者と東の王者。
そして決勝の相手、東の王者・秀徳には緑間真太郎がいるのである。
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