(日常)


たまたま授業が早く終わり、他に用事もなかった遥は部活一番乗りだった。

部員数が多いこのバスケ部では、比例してマネージャーの仕事も多くなる。

丁度いいと判断した遥は、一足先に用意をし始めることにした。

やらなければいけないことは沢山あるが、どれも難しいことではない。

ストップウォッチが1つ壊れているのに気付いたり、誰かが忘れたらしいボールペンを見つけたりと、1人で黙々と作業をしていると遠くから声が聞こえてきた。


「────だろう」

「だがそうなると───」


何やら難しそうな会話をしているのは、馴染みのある後輩かつチームメイトのようだ。

声は段々と近付いてくる。


「こんにちは、赤司くんと緑間くん」


遥が挨拶と共に出迎えると、部内で一目も二目も置かれている2人は丁寧に挨拶を返した。


「2人共───」


次に話を続けようとしていた遥だったが、思考は緑間の手元に全て持っていかれてしまう。


「緑間くん、それラッキーアイテム?」

「はい」


思った通りの返答に、遥は思わず笑いを漏らした。


「緑間くんが風船持ってるのって……何か可愛いね」

「なっ!?」


鮮やかな緑の風船を持っている体格のいい男子中学生の姿というのは、不満の声を上げる緑間には悪いがなかなか滑稽である。

遥が風船をつつくと、されるがままに揺れるそれ。

彼の隣に立つ赤司はその緑の球体を一瞥すると───何も言わずに遥に視線を戻した。

その赤い瞳はすぐさま、彼女の足元にある備品が詰まっているカゴに向けられる。


「これは運んでおきます」

「え、いいよいいよ。それもマネージャーの仕事だし」


カゴを軽々と持ち上げた彼の腕を、遥は慌てて掴んで制した。

赤司は空いている片手でその手を優しく剥がすと、表情を変えず淡々と言う。


「ついでですし、オレがしたいからするだけです。迷惑ですか」

「その言い方狡いよ…」


根負けした遥の礼を聞くと、僅かに笑みを見せた赤司と緑間は自身の準備のために去っていった。

そろそろ、HRを終えて各々の用を済ませた部員らがやってくる頃だ。


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