緑間真太郎は困っていた。

朝、例の如く"おは朝"を確認すると、彼の注目する蟹座が6位だったのだ。

日によって運勢は異なるものなのだから、中途半端な順位であっても困る程のことではない。

ラッキーアイテムを身に付け、当たり障りのない1日を過ごせばいいだけの話だ。

しかし、その6位に関する説明とラッキーアイテムが問題だった。


("ラッキーアイテムがあれば絶好調、なければ絶不調な極端な日"……だと?)


胸中で復唱してから、緑間は用のなくなったTVの電源を落とす。

そして制服のポケットから携帯を取り出すと、メール作成画面を立ち上げた。

何文字か打ち込んだところで手が止まる。


(どうすればいい…!?)


緑間は困り果てていた。

おは朝星座占い第6位、蟹座の彼が今日を絶好調に過ごすために必要不可欠なラッキーアイテムが───"気になる異性の最近の写真"だったからだ。









七瀬遥は困っていた。

中学時代の後輩からのメールの内容が理解出来なかったからだ。

"先輩の写真をいただけませんか。"

もう一度文面を確認すると、遥はデータフォルダを開く。

夕焼けの写真に、部活仲間の写真───その中には携帯に転送されたプリクラも含まれていた。

彼女自身が映っている写真はこのプリクラしかないようだが、些かデータが古い。

緑間が写真を何故必要としているのかを知らない遥は、困り果てていた。


「………!」


が、やがて1つの、彼女曰くナイスアイデアに辿り着く。

遥が教室へ到着した頃に届いたこのメールに返信したのは、1限開始10分後のことだった。









緑間真太郎は頭を抱えていた。

ラッキーアイテムがなければ絶不調───見事に当たっていたのである。

占い結果に戸惑っていたために家を出るのが遅くなり、それでもまだ時間に余裕はあったはずなのに全ての信号に引っかかったせいで遅刻危機となり、挙げ句の果てに、近くを通ったトラックが昨晩の雨によって出来た水溜まりを踏んでいったせいで泥水を浴びることになったのだ。

友人・高尾からは、耳に付く馬鹿笑いのプレゼントも受け取り済みである。

背に腹はかえられないと判断した彼が、迷いに迷った末ラッキーアイテム獲得のためにメールを送ったのは数分前のことだ。

すぐに返事は返ってこないと分かってはいても、緑間は気が気でない。

大きな溜め息と共に頭を抱え、彼は自分の席から動かなくなってしまった。

だがその数分後、返ってきたメールを見て、緑間は今以上に頭を抱えることになる。


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