(甘味<酸味)


部活終了後、橙の空を眺めながら、誠凛高校男子バスケットボール部の2年生は揃って帰路につこうとしていた。


「カントク、結局この後どーする?マジバ行っとく?」

「そうね…。別に急ぎじゃないけど、時間あるしね」


頻繁に通うファーストフード店での時間外ミーティングが決定し、特に用事もなかった遥も二つ返事で頷く。

他の部員からも同じ返事が返ってきたため、このままこの場にいる全員で押し掛けることになりそうだ。


「え、何あれ」


もう少しで校門というところで、先頭を歩いていたリコが声を上げる。

リコの隣にいた遥の視界にも、その不思議な光景は見て取れた。


「…………何、アレ」


後ろにいた日向たちも、たっぷりと間を置いてから苦笑混じりに言う。

彼ら彼女らの視線の先には、誠凛高校の入口。

そしてそこには、尋常じゃない数の女子高生が溢れていた。

いや、女子高生だけではない。

見慣れない制服───おそらく近くの高校のもの───も含め、中学生であろう女子生徒や子供を連れている主婦もいるようである。


「誠凛ってこんなに人気あったっけ?」

「……違うと思うわよ」


遥の疑問に呆れながら、面々は少しずつ群衆へと近付いていった。

これを越えないと帰れないのだ。

黄色い声を上げている女たちの横を抜けようとすると、その群衆の中心で頭1つ、2つ抜きん出ていた人物が嘆いた。


「遥センパイ待って下さいっスー!!!!」


名前を呼ばれた遥だけでなく、一行は顔を強ばらせると一斉に振り返る。

聞き覚えのある声、聞き覚えのある話し方、そして見覚えのある顔。


「「黄瀬涼太!!?」」

「どもっス」


いつぞやのようにペン片手に挨拶したのは、キセキの世代の自称下っぱ、黄瀬涼太だった。


「遥センパイ、5分下さいっス!」

「え、うん」


礼と共に無邪気な笑顔を見せると、黄瀬はまた色紙にペンを走らせ始める。


「涼太何しに来たんだろ」

「約束してないの?」

「んー…記憶にはない」


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