(日常)とある2人を除く部員全員が、それぞれ違う意味で頭を抱えていた。
立夏から1ヶ月程経ち、気温も日差しも真夏日の条件をクリアしている今日、熱がこもってサウナ状態の体育館での長時間の部活動は、部員たちの命にも関わることである。
そのため体育館の扉という扉を開け放ち、少し長めの休憩をとっていたのだが、部員2人が気が抜ける会話をし始めたのだ。
「あ、鉄平見てあの雲!」
「どれ?」
「あれ!」
開け放たれた体育館側面部の扉の前に、揃って肘を立てて俯せに寝転がっていた2人は、顔を寄せ合い空を流れる雲を指差している。
暑さのせいもあり、この光景だけでも他の部員の神経を様々な意味で逆撫でしてしまうというのに、会話の内容が更に問題だった。
「お、アレ絶対ラ●ュタだラ●ュタ!」
「だよね!絶対そうだよね!」
「よし…バ●ス!」
「え、早い!私も言いたい!」
「すまん。やっぱ2人でじゃないとな」
「そうだよー。せーのっ」
「「バ●ス!」」
積乱雲を指差し、有名映画ネタで騒いでいるのは、誠凛バスケ部エースの木吉と、マネージャーの遥。
そしてその後ろで握り締めた拳を震わせ、今にもツッコみそうなのが主将の日向、隣でこめかみを押さえているのがカントクのリコである。
「…あの2人見てると頭痛くなってくるわ」
「なあカントク、いつツッコめばいい?つかドコからツッコめばいい!?」
苦労人2人の少し後ろでは、伊月と小金井が別の問題に直面していた。
「ラ●ュタ…バ●ス……」
「ムリだから!それでダジャレはハードル高すぎだから!」
小さく口内で呟きながら、周りから不評なダジャレを生み出そうとしている伊月だが、さすがに単語が単語なだけに難問だろう。
この2人の更に後ろにいる常識人2人は、また別の意味で困り果てていた。
「コレ何処から止めればいいんだ…。てか止められるのか…?」
眉を下げ途方に暮れる土田と、同じく眉を下げ首を捻る水戸部。
今日も誠凛高校男子バスケットボール部は平和なようだ。
ある日の誠凛(前)
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