(え、ちょ、アレって───)


とある日曜日、学校の都合だか何だかで部活は休み、休みらしく午前中家でゆっくり過ごしてみたがやはり暇、相方の緑間には既に振られ済み、と暇を持て余しすぎていた高尾は、1人何をするでもなく賑やかな通りを歩いていた。

すると、休日らしい人混みに紛れて高尾の視界に飛び込んできたのは、彼が今様々な意味で最も注目している他校の先輩───七瀬遥。

遊びにでも行くのか、見慣れないが可愛らしいワンピースを着こなす彼女は、興味津々といった様子で辺りを見渡しながら歩いている。


(着飾った女が1人、油断しきって歩いてたら声かけてって言ってるようなモンだよなー)


高尾は背後から彼女に近付くと、肩に手を置きとびきりのスマイルと共に挨拶をした。


「遥サンこんちわっ」


遥は比較的驚きやすい体質である。

突如後ろから肩に手を置かれ声をかけられたため、それはもう逆に高尾が驚くぐらいの反射神経で、肩を跳ねさせ振り返りそして距離を取った。

その素早さに目を丸くして高尾が戸惑っていると、相手が見知った顔だと気付いた遥は人懐こそうな笑みを浮かべる。


「高尾くんだったんだ。こっちに知り合い少ないから誰かと思った」

「いやオレも、まさかこんなとこで遥サンと会うなんて思ってなかったっすよ」


負けず劣らず人懐こそうな笑みを返すと、高尾はさりげなく遥を道の端へと誘導した。


「こっち来るなんて珍しいっすよね。部活休みなんすか?」

「うん、そうなんだ。だからホントは友達と遊ぶはずだったんだけど……」


肩から提げていた小振りな鞄から引き抜かれたのは、1枚の小さな長方形の紙。


「10分ぐらい前に友達のワンちゃんが緊急手術って電話がかかってきてね、帰っちゃったんだ」

「あ、そうなんすか…」


理由が理由なだけにまともな返事が出来ずにいた高尾に、長方形の紙が手渡される。

それは、今ちょうどこの辺りで特設会場を設けて行われているサーカスの優待券だった。


「あれ、これってそこでやってる…」

「うん。有効期限が今日までだったから、その子と行くはずだったんだけどね。高尾くん良かったらもらってくれないかな?」

「え?」

「私服だからこれから遊びにでも行くのかと思ったんだけど、違った?」


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