(日常)


部活動終了のミーティングから、40分。

体育館の利用可能時間にまだ余裕があるからと、用事がある木吉とリコ以外の部員は自主練を行っていた。

特にバスケ初心者である小金井は、40分間ずっとシュート練習に打ち込んでいる。


「……っと」


日向に教えてもらったフォームで放たれたボールは、綺麗に弧を描いたがしかしリングに弾かれ転がっていった。

滑らかに遠ざかる球体は、傍で練習を見ていた水戸部から彼へと戻される。


「コガくん凄いね」

「!!?」


突如背後からかかった声に、条件反射で勢い良く振り返る小金井。

その反動で手を離れたボールを、遥は拾って返してやった。


「全範囲からシュート打てるんでしょ?」

「へ?」


その問いに答えたのは、声のないまま頷いた水戸部だ。


「気付いてなかったの?さっきからずっと、どこから打ってもシュート成功率が同じなんだよ」


またも水戸部が頷く。

小金井自身は深い意味もなく、様々な距離、方角からシュートを打ち続けていた。

それはけして成功率が高いものではなかったが、ある程度範囲を区切って集計してみると全て平等に成功していたらしい。


「え、当たり前じゃないの?」

「外から、つまり私みたいな選手でもない観客側からしたら当たり前と思われがちだけど、中から、つまり経験者やプレイしてる当人側からしたら当たり前じゃないよ。勿論成功率が高かったらの話。ね、凛ちゃん」


同意を示すように水戸部は再度頷く。


「全範囲得意って人はいるし得意に越したことはないけど、普通やっぱり得意な場所、苦手な場所があるもん」


小金井は手元のボールに視線を落とした。


「だからコガくんが成長したらすっごい得点源になっちゃうかもね!順ちゃんの立場なくなっちゃうなー」

「ちょ、順ちゃんって呼ぶなっつったろ七瀬聞こえてんぞ!」


隣のゴールを使っていた日向は叫ぶも、伊月と土田に「順ちゃんって呼び方可愛いじゃん、良かったな日向」と茶々を入れられたせいで、すぐにターゲットは変更された。


「どーゆー意味だよそれオイ!」

「うわっ、ボール投げんな八つ当たりやめろって!」


照れている日向を止めるためか、水戸部は静かに隣のコートへ向かう。

残された小金井と遥の反応は似て非なるものだった。


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