「遥サーン!」


いつも通りに部活を終え、帰り支度済みの遥が校門を出ると、飛んできたのは聞き覚えのあるようなないような、な男性の声だった。


「おい、あれ…」

「えっ」

「秀徳の高尾…!」


遥に続いて校外に出てきた誠凛バスケ部1年生たちが、その男性の姿にざわめき始める。

学校指定のお馴染みの鞄を肩から下げ、ひらひら手を振るのは、彼らの言う通り秀徳1年・高尾だったのだ。

帝光出身の相方を持つという点で共通点のある火神や、同族嫌悪でライバル視しているはずの黒子は横目で捉える程度で、高尾はにこにこと人当たりの良さそうに女子生徒のもとへ駆け寄った。


「お疲れ様、ごめんね高尾くん。待った?」

「お疲れ様でっす!さっき着いたばっかなんで大丈夫っすよ」


親しげに交わされる会話は、間違いなく"待ち合わせ"の会話である。

しかも高尾は、それは自然に遥の肩に手を添え、彼の物らしい自転車まで誘導するではないか。

完全に他校生の待ち合わせ放課後デートな光景に、1年生トリオは思わず辺りを見渡した。

こういうときにツッコミと説明を促す役目の2年生の姿は、誰1人見当たらない。

こっちにいないなら向こうに───ところが、高尾と遥の共通の知人であるはずの緑間の姿も見当たらないではないか。


「そう言えば、今日はいつもの自転車じゃないんだね」

「あー、真ちゃん送ってから来たんで。だから遥サンはココ乗ってくださいね」


高尾がぽんぽんと叩いて示したのは、彼の自転車の荷台だ。

と、ここで漸く、暫し呆気に取られ固まっていた火神が動いた。

自分の目の前で、少なからず好意を抱く先輩が他校の同輩の自転車に乗り、下校しようとしている。

先輩に挨拶しても同輩に声をかけても、何らおかしいところはない。


「───…!?」


が、声を発しようとした瞬間、後ろから制服を引っ張られた火神は思い切りつんのめった。

慌てて振り返れば、彼の制服から手を離したばかりらしい黒子と目が合う。


「何だよ黒子───」

「つけましょう」

「は?」


怪訝そうな火神の前で、何を考えているのか読むことが出来ない黒子の双眸が鈍く輝いた。


「尾行し(つけ)ましょう」




出待ち〜高尾の場合〜

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