(ナヴィガトリアの領域の続き)


「なあなあ、こないだ赤司とレオ姉と会ったんだろ?ズルい!オレとも遊んで!」

「え?あ、うん」


珍しい相手からの着信だと思いながら携帯を耳に当てれば、弾丸の如く言葉が飛んでくる。

聞き手に徹する以外に選択肢のない遥が頷くしか出来ないでいるうちに、いつの間にか終話となっていた。




───そして翌週日曜日、遥が待ち合わせ場所に行くと、既に到着していた葉山がぶんぶんと手を振って出迎えてくれた。

遥の予想通り、葉山はかなり身軽な服装だ。

勿論彼女もそれを見越して、今日は軽装である。


「遥久しぶりっ」

「久しぶりー」

「じゃ、行こっか」

「何処に?」

「東京っつったらあそこっしょ!」


半ば無理矢理手を繋ぐと、葉山はずんずん歩いていく。

その方向は繁華街から少しそれるため、飲食店も隠れ家的な店しかないし、洋服屋も有名どころはなかったはずだ。

しかし葉山は、それはうきうきと鼻歌まで歌っているようである。


「遥って運動出来たっけ?」

「どうだろう…バスケ部の練習を途中で抜けることなく見続けるぐらいの体力はあるけど」

「それ体力あるってゆーの?」

「どうだろう…?」

「もー、疑問ばっかじゃん!」


街路樹の生い茂る通りを抜けると、2人の前に姿を現したのは世間的に少々有名な公園の入口だった。

かなりの面積を誇るその公園はいくつかのエリアに分かれていて、それぞれがテーマに準えた大きな遊具を中心に構成されている。

遥も幼い頃はよくあそびにきていたものだが、物心がついてきた頃からはすっかり疎遠となっていた場所だった。


「ここ全部制覇するから!」

「え、制覇?」


自信満々な葉山に手を引かれ、遥はまず第一のエリアに足を踏み入れた。

このエリアのテーマは海。

メインの遊具は、四方八方に足を伸ばした巨大な蛸の滑り台だ。

見覚えのある景色は幼い頃の記憶と重なるところがあり、思わず笑みを見せた遥だったが、次の瞬間表情を強ばらせた。

全部制覇=全エリアの全遊具で遊ぶ、だとしたら、とんでもない時間ととんでもない体力が必要ではないだろうか。

シャツ、短パン、スニーカーの軽装を選んで良かったとつくづく思うと同時に、遥は明日の筋肉痛を覚悟したのだった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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