「初めまして!オレは木吉鉄平。よろしく!」

「七瀬遥です。木吉くん大きいね」


薄桃色の花弁が散り落ち絨毯と化した道端で、真新しい制服に身を包んだ少年少女は対峙していた。

まだ幼さの残る顔立ちはこれからの成長を大いに期待させるものだったが、2人共どこか似通った雰囲気を持っている。


「鉄平でいいよ」


つい先日までランドセルを背負っていたとは思えない程の背丈の少年は、にこやかに続けた。


「ずっと誰かの役に立ちたいって思ってたんだけど、これからこの身長をバスケで活かしてこうって思ってるんだ」


大きな掌を添えた胸には、決意も夢もいっぱい詰まっているのだろう。


「じゃあ私も遥でいいよ」


目の前の大きな彼を見上げている遥は、嬉しそうに続けた。


「私、バスケ部のマネージャーなんだ。いつか当たるかもね」


戦うことになったらどっち応援しようかな、と呑気な様子ではあるが、少女からすれば深刻な問題なのである。

それからも、互いに人見知りすることなくバスケから話題は広がっていき、祖父母が声をかける頃にはすっかり打ち解け連絡先を交換するにまで至っていたのだった。

それが今から数年前───木吉鉄平と七瀬遥の出会いである。









「ちーっす……って、皆して何見てるんだ?」


誠凛7番、主柱の片割れである木吉が体育館へ足を踏み入れたとき、練習着に着替えた面々は舞台手前で輪になり何やら盛り上がっているようだった。

近付いてみれば、輪の中心にいるのはマネージャーである遥で、その手には冊子が握られている。

開かれたそれ一面に貼られた写真は、木吉にも見覚えのあるものだった。


「遥、それ…」

「うん、アルバム。鉄平特集の」


奥ゆかしい和風な門構えの前で、幼さ残る容貌の2人がどこかよそよそしく寄り添って立っている写真。

庭先に広げたビニールプールいっぱいにスイカを浮かべ、ご満悦な2人の写真。

2人揃って土埃に汚れたジャージ姿で、それは楽しげにバスケをしている写真。

2人と老夫婦がコタツで具だくさんの鍋を食べている写真。

四季折々の思い出がつまったそれらの写真は、2人のことを知らない人が見てもすぐに察してしまう程、幸せな雰囲気も一緒に収められたものだった。


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