3対1で進路は違うものの、無冠と不名誉な名で呼ばれていた葉山、実渕、根武谷と遥は中学生の頃からの顔見知りである。

特に何故か見る見るうちに女子力に磨きがかかっていく実渕とは定期的に連絡を取り合い、ランチやショッピングに出掛ける程には関係は続いていた。

そしてその実渕経由で、彼と同じ高校へ進んだ残りの2人とも会う機会が出来ていたのだ。

今も男3女1の逆ハーレム状態であるが、皆が皆気にすることもなく盛り上がっている。


「なぁ遥、誠凛って新設校なんでしょ?どんなトコなの?カッコイイ奴いる?」

「私好みの男前はいるかしら?」


学生御用達のファーストフード店にて、向かいの席からキラキラと輝く丸い瞳が眩しい葉山と先程から隣で遥の髪を撫でている実渕の2人に畳みかけられるも、唯一の他校生である遥は慣れた様子で動じることもなかった。


「特徴があるわけじゃないけど、新しいから何処も綺麗だよ。それから学年中でカッコイイって騒がれてる子もいるし、玲央の好みかは分からないけど男前もいる。あ、勿論コタくんも玲央もカッコ良くて男前だからね!」

「さんきゅー!」

「あら、ありがと」


天真爛漫に喜ぶ葉山と優雅に微笑む実渕を尻目に、根武谷はもう何個目か分からないハンバーガーを口に放り込んだ。


「誠凛ってあの木吉がいるとこだろ?オマエ中学ん時から仲良かったみたいだし、ついてったのかよ」

「ついてったっていうか、目標が同じだったっていうか…。いくら根武谷くんが凄いマッスルでも鉄平は負けないよ」

「勝つのはオレだ」


機嫌を損ねたらしく眉間に皺を刻むと、根武谷は特大サイズのコーラを勢い良く飲み干した。


「…つか、コタくん、玲央、鉄平ときて何でオレは名字に君付けなんだよ」

「何、嫉妬?」


ゲップもそっちのけでぼそぼそと呟いたはずの根武谷の愚痴は、よりによって見事に実渕の耳に届いていたらしい。

これ見よがしに隣の鍛えられていない遥の細い腕に自身の腕を絡めると、彼は妖艶なまでに笑ってみせた。

言わずもがなではあるが、この洛山に進んだ3人の中で言えば、実渕が遥と一番仲が良いのである。


「えー?永ちゃんそんなこと気にしてたの!?」


小馬鹿にしたようにより一層騒がしくなった葉山に容赦なく何度も肩を叩かれ、根武谷はぐったりと項垂れた。

席順にも表れている通り常日頃からこのような扱いではあるが、前も隣も完全に敵しかいない。


「コタくんも玲央も鉄平も、皆そう呼んでいいって言ってくれたから呼んでたんだけど…根武谷くんがいいなら私も永ちゃんって呼ぼうかな。何か響きがいい感じ」


救世主の如く発せられた悪びれもないその声に、根武谷の様々な意味でむず痒い頬がひくひくと引き攣る。


「良かったね、永ちゃん!」

「良かったわね、永チャン」

「………やっぱ暫くは今まで通り名字にしてくれ」

「うん?」


今日もこのクセのある4人はいつも通り元気なようだ。




洛山無冠と誠凛マネージャー

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