その日、誠凛高校バスケ部の活動は、いつにも増してハードだった。

バスケに全てを捧げている部員たちは、文句を言うことなく必死に食らいついて数々のメニューをこなしていたが、殺人的な激しさの練習に、皆自身の限界に挑戦している状態だ。

体力のない黒子は何度ダウンしたか分からない程倒れ、その都度主将に怒られていたし、あの火神ですら汗だくで、鋭い眼光が更に鋭さを増したために恐ろしい形相だった。

日向と伊月に至っては、ヤケクソと言われても仕方のない様子で自身と仲間を奮い立たせており、いつもにこやかな木吉ですら、真剣を通り越して恐怖心を抱かせるような表情しか浮かべていない。

部内でも穏やかな常識人という印象の強い水戸部と土田、そしてムードメーカー小金井も歯を食いしばり、生死が係っているのかと疑ってしまう程、その体力全てを振り絞らん勢いだ。

当然指揮を取る側のカントクも一切手を抜く様子はなく、特異な双眸を吊り上げた彼女からは部員たちのための容赦ない叱咤が飛んでいる。

そんなカントクと部員たちの熱気を直に感じながら、マネージャーである遥もメンバーの体調管理は勿論、練習の記録や備品の準備なども含め、体育館中に気を配り奔走していた。

部員たち程激しく動くこともなければ、カントク程厳しく目を光らせることもない遥だが、目の前のことだけでなく広く深い範囲で集中し続ける必要があるため、彼女の体力もまた大きく削られている。

マネージャーである自分がこの状態なのだから、追加分のドリンクはいつもと配合を変えた方がいいかもしれない───


「よし、20分休憩!」


と、遥が部員たちの体調を心配し始めたところで、ちょうど日向が休憩の合図を出した。

苦しげな表情のまま各々散っていくのを眺めていた遥だったが、ふと視界に入った人物の方へ歩みを進める。

体育館最奥の舞台上に弛緩しきった体を投げ出している仲間───小金井だ。


「ふは〜〜〜〜〜〜」


腹の底から吐き出されたのであろう、大きな溜め息。


「コガくん」


小金井はごろりと寝返って俯せになり、顔だけを遥の方へ向けた。

見るからに疲労が滲み出ているが、彼は力無く笑ってみせる。


「七瀬ちゃんだー」

「お疲れ様。大丈夫?」

「大丈夫大丈夫!キツいけど…やっぱ楽しいし!」


気力は十分有り余っているのだと、小金井は握り拳を上げ、親指を立てた。

おそらく体力的には精一杯の強がりのはずだ。


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