「すいません、驚かすつもりはなかったんですけど…」
「ううん、私が勝手に驚いただけだから。ごめんね、火神くんも」
遥の謝罪に短く返事を返してから、火神は訊ねた。
「センパイ1人だよな…っすか。早くねーっすか」
「たまたま終わるの早くて。1年生も随分早いみたいだけど…」
「学年集会だったんで」
黒子が言うには、1年は学年集会だったため、クラスに関わらず全体的に終了が早かったそうだ。
降旗たちも含め、彼らが早い理由はこれらしい。
「そっか…じゃあもう全部用意しちゃって大丈夫そうだね」
「はい。準備しときます」
「こっちはやっとく…です」
黒子と火神は何やら言い合いながら、倉庫の方へと去っていった。
その背を見送り、遥は再度首を捻る。
後輩たちの行動力に感謝ではあるが、ますますすることがなくなってしまった。
せっかく早く来たのだから色々と役に立ちたかったのだが、どうやら出番はないようだ。
「ドリンク用意するかな…」
ボトルを取りにいくため踵を返すと、今度は何か固いものに顔を打ち付ける。
「………!」
遥がぶつかったのは、今まさに目の前で狼狽えている水戸部。
どうやら声をかけようと───肩を叩こうとした矢先に遥が振り返ったため、こうなったらしい。
「ごめん、凛ちゃん」
水戸部が首を振ると、その後ろから小金井と土田が顔を出す。
「七瀬ちゃんと水戸部、どしたの?」
「何かあったのか?」
鼻を押さえながら謝罪する遥とおろおろと落ち着かない水戸部に、小金井と土田は揃って頭上に"?"を浮かべた。
「私が凛ちゃんにぶつかったの」
水戸部も黙ったまま首を縦に振る。
「あー、それよくあるよくある!な、水戸部!」
小金井が水戸部に同意を求めると、再度彼は頷いた。
「デカいししゃべらないからな、水戸部は」
「なるほど…」
土田のもっともな説明に、遥も納得の様子である。
今回のように、彼の人柄も相俟って、意図せず誰かの目の前の壁になっているということは多いのだろう。
「───なんだけど。ねぇ日向君、いいと思わない?」
「えー…あー…いや、それは…」
と、遠くからカントクと主将の声が聞こえてきた。
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