男らしい顔付きや体格、豪快なプレイや潔い考え方がカッコいい。

遥を気にかけ、咄嗟に庇うことも出来るところがカッコいい。

リスのように食事をする姿や、犬に怯える姿など可愛い一面もあるが、やはり火神はカッコいいイメージが強い。


「はー……」


戸惑いを露に、大きく長く息を吐きながら火神は頭を掻いた。

素直に喜べばいいのか、否定すればいいのか、何か言い返せばいいのか、こういうときどうするのが正しいのか、むしろ彼女は何を思ってそう伝えたのか。

深い意味はないにしろ、遥の発言は火神を混乱させるに十分な破壊力を兼ね備えていた。


「何なんだよアンタ、マジで…」

「何なんだよって言われても…ただのマネージャー?」

「……………」


火神は手で顔半分を覆うと本音を漏らす。


「心臓に悪ィ…」


と、彼はここであることに気が付いた。

顔を押さえていた手を離し、思い起こす。

この手は数分前まで、疑似ダンクを楽しんでいた遥の腰付近を掴んでいたのだ。

あのときは特に何も思わなかったが、今改めて思い出すと困惑が込み上げてくる。


(意識すんな意識すんな意識すんな意識すんな意識すんな)


様々な角度から訳が分からなくなってきた火神は、石化の如く固まってしまった。


「え、ほんとどうしたの?大丈夫…じゃないよね。打ちどころ悪かった?」


遥が慌てて揺さぶるも、脳内が真っ白な彼は今それどころではない。


「…………七瀬センパイ」

「ん?」

「勘弁してくれ、です」


たっぷり間を置いてから、火神はぐったりと項垂れた。

彼の頭上に浮かぶのは、"完敗"の二文字。


「遥先輩、火神君」

「「!!!!!」」


突如横から聞こえた声に、遥と火神は手を取り合って肩を跳ねさせる。

声の主は、帰り支度を済ました黒子だ。


「もういい時間なので、そろそろ鍵を返した方がいいと思います」

「うわ…。付き合ってくれてありがとう、火神くん」


冷静な彼のアドバイス通り、時計はいい時間を示している。

遥は急いで立ち上がると、火神に簡単に礼を告げてから体育館内の確認のために走り出した。


「…楽しそうでしたね」

「どこが!?つか見てたのかよ!」


先輩マネージャーの背を見送りながらいつもの調子で黒子が言うと、大分落ち着いたらしい火神のツッコミが決まる。


「視界に入ってました」

「見てたっつーんだろ、それ」


黒子は横目で火神を捉えた。


「黄瀬君を見てるようでした」

「は?何でアイツが…」


聞き覚えのある名前が出、火神は怪訝そうである。

そんなことを気にするタイプではない黒子は、淡々と告げた。


「似てましたよ。振り回され具合が」

「…マジか」


チームメイトの発言を受け、鈍器で殴られたような衝撃が頭に走った火神は、その場に再度倒れ込むこととなる。

どう考えてもどう足掻いても、この勝敗が覆ることはなさそうだった。




振り回される担当:火神


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