先日、近くのショッピングモール内にスポーツ用品店がオープンしたらしい。
遥の家から電車で数駅の距離にあるそのショッピングモールは、とにかく大きく、衣料品や食料品も幅広く手に入るということで連日大賑わいの大人気スポットだ。
きっとスポーツ用品店も、広々とした大型のものに違いない───と、遥は休日を利用して訪れることにしたのだった。
「おお…」
ショッピングモールの3階端、大きく開いた入口が開放的な印象を与えるスポーツ用品店を前に、遥は声を上げる。
縦にも横にも広そうなそこは、開店して30分程だというのに人影が多い。
開店セールと銘打った効果だろうか。
この様子だと、もしかしたら備品も安く手に入るかもしれない。
一緒に行くはずだったリコが、急遽家の用事で行けなくなってしまったため遥1人なのだが、もし彼女が共に来ていたら購入品は凄まじい量となっていただろう。
「……よし」
少々着飾った女子高生が、スポーツ用品店の前で1人意気込む姿はやや不似合いだったが、それを気にする者は周りにいなかった。
嬉々として店内に足を踏み入れた遥がまず向かった先は、勿論バスケットコーナー。
見知ったものから新作までを、穴が開くほど見つめていく。
そうして端から順に見ていくと、レッグスリーブのコーナーに辿り着いた。
誠凛陣は誰も使用していないので詳しくはないが、とりあえず新作らしい商品に手を伸ばしてみる。
するとタイミングが重なったらしく、隣から伸びた手とぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい」
「すいません」
同時に謝罪を口にして顔を見合わすと───覚えのある顔に互いに目を丸くする。
「海常の笠松さん…!」
「誠凛のマネージャー…!?」
「はい。マネージャーの七瀬です」
遥は愛想よく挨拶をしたつもりだったが、笠松は目を瞬かせているだけだ。
「笠松さん…?あ、笠松先輩か笠松主将とお呼びした方が…?」
「いや、別にそこは気にしてない。……ただ驚いただけで」
遥のまっすぐな瞳に耐えられなくなったのか、海常主将は視線を逸らす。
彼は女性が得意ではなく、しかも遥は自身のチームを負かしたライバル校の生徒だ。
だからと言って気まずいわけではなかったが、笠松はどうすればいいのかと狼狽えていた。
return →
[1/3]