「いやー、ありがとうございました!マジ勉強になりました!」
「私こそありがとう!勉強になりました」
互いに礼を述べながらサーカス特設会場に向かうと、開場時間が近いということもあり、辺り一面人だらけだった。
サーカス用のテントを中心に所狭しと溢れる人のせいで、何処が最後尾かも分からない。
「うっわすっげー人!」
「引き換え出来るかな?」
「ま、行くしかないっしょ!」
遥が友人から託されたサーカス優待券は事前予約制の当日引換券なため、1度受付に行く必要がある。
人混みを掻き分け引き換えた後、入場待ちの列に並ばなければならないのだ。
「こっから抜くか…」
遥の手を引くと、高尾は人の合間を上手く縫うように進んでいく。
秀でた目のおかげなのか、たんに得意なだけなのか、彼は人混みを歩くのが上手いらしい。
そんな高尾の活躍により、予想より遥かに早く引き換えることは出来たのだが、結局入場に時間がかかってしまったため、遥たちが着席出来たのは開演5分前だった。
「結局ギリギリっすね」
「うん。でも見えやすいし、楽しめそう」
遥の言う通り、センターブロック中段の端は見えやすく移動もしやすいため良席だろう。
まだかまだかとサーカスを待ち望んでいる様子の遥を見て、高尾は思わず口元を綻ばせた。
(ホント可愛いな、この人)
先程のスポーツショップで見た頭の切れる先輩マネージャーと、今目の前にいる彼女は同一人物とは思えない程ギャップがある。
(緑間たちキセキの世代が"いろんな意味で認めて適わない相手"っつーの、納得だわ)
確かに彼女は人としてもマネージャーとしても魅力的だ────と、次第に辺りが暗くなり、観客のざわめきも落ち着き始めた。
「レディース!アーンド!ジェントルメーン!」
突如現れたピエロたちによるギャグテイストな演説から始まり、動物たちによるパフォーマンス、団員による肉体技、観客席に仕掛けられた悪戯等、飽きることなく繰り出されるエンターテイメントに観客は全員釘付けである。
遥と高尾も例外でなく、開いた口が塞がらない状態だ。
← return →
[3/4]