「順ちゃんって呼ばれるのそんなに嫌なのかな?呼びやすいのに」
「イヤってゆーか…ははは……日向ドンマイ」
日向が遥を意識しているということ、また同時に遥は日向がリコを好きだと思っていることを知っている小金井からすれば、それ以外にかける言葉はなかった。
伊月と土田もそれを知った上で茶化したのだが、遥が知る由もない。
「コガくん、ホントに順ちゃんの出番なくしちゃおうよ」
「え、マジで!?」
「うん!今のところ、シュート成功率は約5割。これだと普通より下の人になっちゃうしね」
「えええ…」
自分が上手くなればチームの役にも立てるし、上手くなりたいという気持ちも強い小金井だが、本気なのか冗談なのか、キャプテン・日向の出番をなくしてしまうレベルに達するのは無謀だと自覚していることもあり、細々と涙を流しながら苦笑気味である。
と、そのとき小金井はあることに気が付いた。
「って七瀬ちゃん、オレの練習ずっと見てたの?」
「うん」
即答。
「自主練始まってからずっと見てたよ」
だから全範囲シュートが打てるのかと感心したり、シュート成功率を知っていたのかと小金井は納得した。
そしてすぐにもう1つ重大なことに気が付くと、みるみるうちに顔に熱が集まっていく。
(え、え、七瀬ちゃんがずっとオレを見てた!?)
スリーポイントが連続で成功したので両手を上げて喜んだ後拍手してくれていた水戸部に報告しに行く姿や、アンダーハンドレイアップを激しく外したせいでボールがゴール裏に引っかかってしまったため、慌てて水戸部に助けを求めに行く姿を遥に目撃されていたということになるのだ。
(うわ、はずかしーっ!!!!)
小金井は頭を抱え蹲った。
「え、コガくん急にどうしたの?」
遥も慌ててしゃがみ込むと、小金井の顔を覗き込もうとする。
「ううう…オレ、マジで練習頑張るよ七瀬ちゃん!や、今までも頑張ってたけど!」
これ以上マネージャーにカッコ悪いところを見せるわけにはいかないと、拳を固く握り締め立ち上がった小金井。
その姿を追い嬉しそうに瞳を輝かすと、遥も立ち上がる。
「飲み込み早いし、コガくんなら大丈夫!打倒順ちゃん!」
「だから順ちゃんはやめろって七瀬マジ頼むから!」
日向の悲痛な叫びが再度響くが、小金井の耳に届くことはなかった。
(オレだって───)
強くなりたい、皆のために
彼女の期待に応えたいんだ
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