あれから数時間。

遊びに来ていた小学生も味方につけた葉山は、それは楽しそうにエリアを制覇していった。

学生バスケ界での通り名の通り、身体能力がずば抜けている彼は意図も容易くクリア出来るのだが、それについていかねばならない遥はへとへとでくたくたである。

途中何度も葉山に急かされ押され、何とか最後のエリアにまで辿り着くことが出来たのだった。


「此処で最後だよね?」

「いー感じだろ?」


最終エリアは森がテーマらしく、木製の巨大なアスレチックがどんと正面に構えていた。

端には縄梯子が垂れ下がっており、そこから展望台に上がったり、手すりから丸太がぶら下がっているだけで歩くとゆらゆらと揺れる橋を渡ったり、網のトンネルを潜ったり、5メートル程の雲梯を越えて別の区画へ移動したりと、様々な手段で楽しめるようになっている。

これは子供だけでなく、大人も十分楽しめそうだ。


「あっこターザン出来んじゃん!楽しそー!」


右手後方に見える滑車を指差しすっかりテンションが上がってしまった葉山は、颯爽とアスレチックに飛び込んでいった。

ゴールで待っていたい気も山々な遥だったが、続いてゆっくりと足を踏み出す。

腹筋に力を込めて縄梯子を上がって展望台で一服し、橋を越えトンネルを越え、丸太の階段を駆け上がってもう一度休憩。

雲梯を渡って葉山の手を借りながら滑車で滑り降りると、今度は登り棒が待っていた。

正直もう腕の力も残っていなかったが気力でクリアすれば、最後の滑り台のお目見えである。

アスレチックのフィナーレでありメインでもあるこの滑り台は全長300メートル程で曲がりくねっているが、勢いよく滑ることが出来るよう傾斜もそこそこだ。

臆病な子供ならリタイアしてしまいそうなアスレチック全体を一望出来るスタート地点に立ち、遥も鼓動が高鳴るのを感じていた。

なかなかのスリルである。


「何、遥怖いの?」

「怖いって程じゃないけど、結構高いし急だし長いなって」

「大丈夫、オレも一緒に滑るから!」

「え、ちょっとコタくん…!」


葉山は遥を半ば無理矢理股の間に座らせると、後ろから腹に手を回し、逃げられぬよう容赦なく抱きしめた。

途端、遥の頬に朱が走る。


「これシャンプー?それか制汗スプレー?ちょーいい匂い」

「汗かいてるから駄目駄目駄目駄目!」

「えー」


腕の中で身を捩る遥を物ともせず肩口に顔を埋めていた葉山だったが、次の瞬間勢いをつけて下り始めた。


「じゃ、スタート!」

「心の準備が…!」


右へ左へそして下へ。

あっと言う間に300メートル下り終えると、遥は高鳴る胸元を押さえながらふらふらと立ち上がった。


「あー楽しかった!次飯食いにいこーぜ!」

「……………うん」


まだまだ元気でご機嫌な葉山の笑顔はキラキラ輝いている。

色々な意味で振り回されふらふらではあったが、遥が差し出された手を拒むことはなかった。




トリックスターの霹靂

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