教師VSクラス全員、勝者虹村。
「虹村よくやった!」
「虹村、七瀬の次はオレとハグを!」
「それお前が七瀬と間接ハグしたいだけじゃねーか!」
「男子気持ち悪ーい!」
「さぁ、遥。思い切って虹村の胸に飛び込んでらっしゃい!」
「え、ホントにするの?」
ほら、と急かされ背を押された遥が虹村の正面に躍り出る。
切れ長の鋭い瞳が見下ろした先、戸惑いに揺れる瞳はそわそわと落ち着きがない。
抗議の声を上げる虹村と疑問を繰り返す遥はクラス全員に取り囲まれ、完全に逃げ場をなくしていた。
「修くん」
「あ?」
「とりあえず受け止めてね」
「は?」
「そうしたら皆納得するみたいだし」
納得と同時に大いに盛り上がるだろうがな。
ツッコミを返す前にふわりと飛び込んできたものを、虹村は反射的に受け止める。
途端に湧き上がる歓声は、勿論ほとんどが冷やかしだ。
「これで虹村も男に…!」
「違う意味に聞こえるからヤメロ」
「虹村、次はオレと!オレに間接ハグを!」
「気持ち悪ーんだよお前はさっきから!」
「虹村くん良かったねー」
「何か兄妹みたいだけど、まぁお似合いだよ」
好き勝手言いたい放題な友人を一喝する一方で、この状況をオイシイと思っている自分がいる。
悶々といろんな意味で葛藤している虹村は、四方八方から冷やかしを受けながらも遥の背に回した腕を離すことはなかった。
「七瀬」
「ん?」
「マジいいネタになってっけど、これいつまですんだよ」
「んー?」
「ちゃんと返事しろや」
「もう離れようか?」
「あー…まぁもーちょいいーんじゃねーの」
ぎゅ、と僅かに力を込めて抱き締めてやると、腕の中の遥は居心地が悪そうに身じろぐ。
だが今更、簡単に解放してやる気なんてない。
声を押し殺して笑った虹村は、そっと優しく溜め息を吐き出した。
一時の幸せを噛みしめるように。
ジョーカー・フェイト
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