「───ってことがあったんだ」


一部始終を掻い摘んで話された過去は、2人の性格を考えれば納得なもののようだがしかし素直に頷けないものだった。


「………いや、何て言うか………その頃からオマエらこうだったんだな……」

「何かもう木吉に至っては、"怪我させたらそのまま責任取って嫁にもらう"とか言いそうな勢いだし……」


皆の呆れを通り越したような反応に対し、木吉はきょとんと、さも当たり前かのように言い放つ。


「そのつもりだけど、遥にも選ぶ権利はあるだろ。そのときはちゃんと話し合うよ」

「「えっ」」


筋が通っているのかいないのか、動揺を露にしたのは部員たちだけでなく、渦中の遥もだった。

驚きに目を瞬かせるも、その頬は僅かに朱に染まっている。

その様子を見て表情を強張らせたリコは、慌てて遥に駆け寄った。


「遥、本当にお願いだから、万が一、万が一これが現実になるときが来たら、お願いだから……いえ、絶対1回立ち止まって考えるのよ」

「う、うん、リコが言うなら…」


両肩を鷲掴まれ、鬼気迫る形相で何度も念を押された遥に残された選択肢は"大人しく頷く"だけだ。

結局2人の惚気と化してしまった思い出語りの数ヶ月後、このときを彷彿とさせるような出来事に見舞われるということを、誠凛バスケ部の面々は誰一人として予想していなかった。

悪童・花宮率いる霧崎第一戦で、また2人は様々な意味で引き離されるのである。




いくら空が色を変えても
残るのは言葉でも思い出でもなくて


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