からん、と涼しげな音を立て、グラスの中に積み重なっていた氷が崩れ落ちた。
そこを満たしていた乳白色の液体は、もうほとんど残っていない。
「遥先輩、私入れてきますよ。何がいいですか?」
「いいの?じゃあアイスティーお願いします」
愛らしい顔立ちの少女は頷くと、少し離れたところに陣取っているドリンクバーコーナーへ駆けていった。
学生に人気な低価格レストランでサイドメニューとドリンクバーで粘っている2人は、中学校時代の先輩後輩である。
今でこそ敵同士ではあるが、かつて同じチームで同じマネージャーとして尽力した2人の仲は、仲間達が羨む程に良かった。
「アイスティー、お待たせしました」
「ありがとう。さつきのは何?」
「ゆず茶です。温かいの飲みたくて」
ドリンクバーから戻ってきた後輩が席につくと、一瞬途切れていた会話が再開される。
先程まで盛り上がっていた話題は勿論、共通の趣味でもあるアレ絡みだったのだが───
「話は変わりますけど…今日は先輩の話聞かせてもらいますからね!」
「え、何?」
さつきは頬を膨らますと、人差し指を勢い良く正面へと突き付けた。
対する遥は目を丸くしながらストローを咥えている。
「中学の時もでしたけど、先輩の情報いーっぱい入ってくるんですから」
「そうなの?」
「そうです!でもどれも確証がないっていうか…だから私の質問に正直に答えて下さいね」
「………分かった」
芸能界にも身を置く黄瀬ならともかく、一般人でスキャンダルとは無縁なはずの遥の情報も、凄まじい情報収集力を持つ彼女の手にかかれば溢れる程手に入るらしい。
有無を言わさぬ様子でずいと攻め寄られ、遥は大人しく首を縦に振った。
「こないだ日向さんと木吉さんとリコさんとマジバに行かれた時、木吉さんの隣に座ったじゃないですか。あれって日向さんを気にしてですか?それとも木吉さんに呼ばれたから?」
「ほんと良く知ってるね」
遥の脳裏に数日前の記憶が蘇る。
部活帰りに日向、木吉、リコと共に馴染みのファーストフード店に寄り、確かに木吉の隣に座ったのだ。
「順ちゃんがリコの横の方が喜ぶかなって思ったのも正解だし、鉄平に隣の席ぽんぽんってされて呼ばれたのも正解だよ」
「……日向さん可哀相に」
「?」
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