「大丈夫っすか?」
素早く差し出されたお茶の入ったコップに口をつけ、一息吐く。
「辛い…けど美味しいね」
想像より辛いキムチと、湯気が立つ具材。
辛さと熱さが相俟ってやや刺激的ではあるが、これはこれでなかなかの味だった。
一気に顔までぽかぽかである。
「ほっぺた真っ赤っすよ、遥サン」
「そう?」
掌を頬に当てると、じわりと広がる火照り。
さぞ血色もいいことだろう。
「ああ、カワイイんでそんな気にしなくて大丈夫っすよ」
「可愛いって……」
本心ではなくお世辞だと思っても、このカワイイには素直に喜べない。
彼には失礼だが、今の状況には不似合い───少々軽く聞こえるのだ。
「え、ちょ、何すかその目…マジで言ってますって」
慌てた様子で言う高尾の瞳が一瞬鋭く輝く。
刹那ではあったが、彼の特異な瞳の名の通り、鷹が獲物を見定めるときのような真剣な眼差しだった。
「遥サン何しててもカワイイんで。だからオレも、カッコ良く見られたいなーなんて思うんすよ」
いつもの調子に戻った高尾の発言に、遥は緩く首を傾げる。
「…高尾くんもう十分カッコイイよ?」
「ありがとーございます。でも、オレと真ちゃんどっちがカッコイイか訊かれたら困りません?」
今日一緒にこの鍋を囲むはずだった共通の友人の名に、遥は確かに困ってしまった。
細められた高尾の瞳を見つめたまま動けない。
目の前にいる彼も、目の前にいない彼も、この他校のルーキーたちはまた異なる方面で魅力的なのである。
どちらもカッコイイのだから、選べという方が無理な話だ。
「…………選べないね」
たっぷり間を空けて、遥は漸く答えを返した。
予想通りの答えだと高尾は笑みを深める。
「オレもなんだかんだアイツのことは認めてるんすよ。だから今日、アイツよりイイトコ見せれたらいいなーなんて思ってたり」
認めているからこその宣戦布告を受ける者はいない。
虎視眈々、攻めるなら今だろう。
「隙あらば攻めちゃうんで、よろしくでっす」
鍋の煮え具合を確認しながらやはり鼻歌でも歌わん勢いでさらりと言ってみせる高尾に対し、そう言われても何をどう返せばいいのかと困惑する遥。
そんな彼女の姿も見えているはずの彼は、素知らぬ顔で鍋を覗き込みながら言う。
「あ、つくねいけそーっすよ」
2人だけの鍋パーティー、穏やかなようでそうではない2人の間では、具沢山な土鍋が食欲をそそる美味しそうな音を立てていた。
鷹と鍋パ
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