家に帰ると何故か赤井さんがいた。
シャワーを浴びていたらしく、下はスウェットだけど上半身は首にタオルをかけているだけで、髪からは雫が滴っている。


「遅かったな」
「ちょっとトラブルが…って、赤井さんこそ今日は徹夜で張り込みって言ってたじゃないですか」
「状況が変わった。俺は不要だそうだ」


つまりその対象を張り込む前に確保したってことね。
仕事が早く終わったから私に会いに来てくれた、というのは素直に嬉しい。
この仕事が、けして自由が多いものではないと分かっているから尚更。

彼の前を通り抜け、無駄に重いカバンを下ろし、オフィス用のジャケットをソファーの背にとりあえずかけたところでふと背後に熱を感じた。


「……っ!」


振り返るより先に抱きすくめられる。
包み込まれた体が熱い。


「もう、急にどうしたんですか…」
「無防備に背を向けるお前が悪い」
「何ですかそれ。此処私の家なんだから、無防備にもなりますよ」
「ホォー…」


一瞬腕の力が緩んだかと思うと、くるりと体を反転させられ、そのまま噛みつくように口づけられる。
咄嗟に抵抗するが彼はびくともしない。
最初から中を貪ることを目的としたそれに、容易く暴かれていく。


「んん、ん…っ」


何の優しさか、呼吸をする暇だけは与えてくれていた。
が、後頭部を押さえている掌が優しく髪を撫で、もう片手は腰を抱いているので逃げる術は絶たれている。
彼の髪から滴る冷たい雫が辛うじて現実に繋ぎ止めてくれているだけで、荒々しいそれに一瞬で飲まれてしまっていた。
優しいのに性急で、強引なのに柔らかい。


「どこか一線を引かれていると感じていたが…随分懐いてくれたようだな」


彼の背に両手を回してしがみつけば、鍛え上げられた筋肉の隆起が掌から直接伝わってくる。
厚みのある胸板だって、私にはない男性のものだ。
エース捜査官として数々の事件に携わってきた彼は相当の実力者で、年中鳥籠に籠もっている私とは何もかもが違う。


「っ、はァ…」
「…名前」


タバコの苦味の残る舌で舌を絡め取られ、ちゅ、と吸いつかれてから漸く解放された。
かと思いきや、目の前の翡翠がスッと細められる。


「ベッドに行くか、このままか、選ばせてやろう」
「まだシャワーも浴びてないし、今はダメです」
「それで納得出来ると思うか?」


納得して下さい。
と言うはずだった唇を親指でなぞられる。
ぞくりと背中に何かが走った。


「随分物欲しげだが…」
「そんなこと…」
「…そこまで言うなら尊重してやろう」


ぷちん、とブラウスの中に解放感が広がる。
何をされたかすぐ分かって、身を捩って体を離すも、容易く腕を取られて横抱きにされた。


「何てことするんですか…!」
「お望み通り、シャワーを浴びさせてやろうとしたまでだが」
「は…!?いや、ちょっとまさか…」


脱衣所で下ろされたかと思うと、私の抵抗を物ともせず服を剥ぎ取っていく赤井さん。
あれよあれよと生まれたままの姿でバスルームへ押し込まれ、いくら身を縮こませようとも、本当に逃げ場がなくなってしまう。


「シャワー浴びるだけ、ですよね」


その返答は、後ろ手にバスルームの扉を閉める音でかき消されてしまった。

  return  

[1/1]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -