2月の14日。

それは日本各地で、男女が様々な意味で騒がしくなる日の1つである。

いい意味でも悪い意味でも喧しくなるその日は、秀徳高校バスケ部も年に一度の物凄く賑やかな1日だ。

勿論今年も例の如く、バスケ部ファンの女子生徒からのチョコで部室はあっと言う間に一杯になってしまった。

特に今年は高校バスケ界ではかなりの有名人である緑間がいるせいか、いつも以上に手狭になっているようである。


「凄い量ですね、これ」

「片付けを任せてすまないな、名字」

「いえ、これもマネージャーの仕事ですし、先輩こそありがとうございます」


綺麗にラッピングされた箱が山積みになっているダンボールを覗き込みながら名前が言えば、また違うダンボールの中身を仕分けしていた大坪から労いの言葉が返ってきた。

とにかくもらったものをダンボールに纏めただけのため、誰宛のものか仕分けしなければならないのだ。

名前のダンボールには数ヶ月前までスタメンだった3年生3人のものばかりらしく、近くのテーブルには3つの小さな山が出来ている。


「……残り全部宮地先輩のだ」


複雑な想いを抱えながら、名前は小さく溜め息を吐いた。

ルックスも良ければ成績も良く、ついでにバスケも出来てしまう彼のファンは多いらしく、プレゼントも相当な量になっている。

密かに憧れと恋心を抱く名前としては、嬉しいような悲しいような微妙なところなのだ。


「宮地は口は悪いが顔もいいし、文武両道だからな。去年もそれぐらいもらっていたはずだ」

「そうなんですね…何て言うか、さすが宮地先輩って言うか」

「まぁこの分だけ応援されてるってことだし、有り難くいただいて帰るとするよ」


そう言った大坪は用意していたらしい紙袋を広げると、自分の分のプレゼントの山を回収し始めた。


「あ、先輩すいません」


名前は急いで自分の学生鞄を漁ると、シンプルな包装と飾り付けを施したものを差し出す。


「もういらないかもしれないんですけど、私も作ってきてて…」

「そうか。ありがとう、いただくよ」

「おい、監督が来いっつってんぞ───」


ちょうどそのとき、話題にもなっていた宮地が部室へ入ってきた。

一瞬驚いたように目を瞠った彼だったが、すぐに同輩へ向き直る。

どうやら呼ばれているのは元主将だけらしい。


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