それは本当に胸躍る連絡だった。
社会に出て2年、地元から少し離れたところで毎日仕事に追われている私に、幼馴染みから"久しぶりに集まろう"というお誘いの連絡がきたのだ。
私には幼馴染みが数名いるのだが、連絡を寄越したのは唯一の女の幼馴染みである。
「きーちゃんもミドリンも大ちゃんも休みとれるって言ってたから、全員集合なんだよ!」
うきうきと耳元で響く彼女の声に、私は携帯を握り締めたまま頷くことしか出来なかった。
いや、もともと断る気もなかったのだが、彼ら残りの幼馴染みに会うのが少し恥ずかしかったのだ。
何せ中学を卒業して以来、進路の関係でほとんど会うこともなかったのだから、今更どう接すればいいのか分からない。
もう私のことなんて覚えていないんじゃないか、なんてマイナスな想像すらしてしまう。
だが、仕事終わりにさつきに指定されたちょっと高級な居酒屋の団体用の貸切個室に入った瞬間、懐かしい彼らを前に緊張やら何やら全てがぶっ飛んでしまっていた。
「お久しぶりです、瑞希さん。お元気そうですね」
真っ先に声をかけてくれたのは黒子テツヤだ。
彼は幼馴染みメンバーの中でただ1人地元に残り、保父さんをしているのだと聞いていた。
彼に何年も片思いしているさつきからの情報だから、間違いないだろう。
試しに訊いてみたら、やっぱり肯定が返ってきた。
「黒子っちばっかズルいっスよー!」
テツヤくんと私の間に押し入ってきたのは、黄瀬涼太だ。
つい先日テレビでも見かけたのだが、いつ見ても整っている容姿がいっそ憎いぐらいである。
イケメンパイロットとして世間でちやほやされてるからって調子に乗るなよ、と言ってやりたい。
後が面倒だから言わないけど。
「瑞希、桃井はどうした?」
「あ、真ちゃん」
「いい加減"ちゃん"はやめてほしいのだよ」
テツヤくんと涼太を横目にやってきたのは、常識人だけどどこか非常識な緑間真太郎。
さつき曰く、今は大病院でお医者さんをしているらしい。
頭も良くてなんだかんだで優しい彼には、ピッタリな職業な気がする。
「え、さつきまだなの?私が最後かと思ったのに」
「さつきなら今駅に着いただとよ」
後ろを振り向けば、欠伸を漏らしながら携帯をひらひら振ってみせる青峰大輝の姿が。
彼とさつきは親同士がもともと知り合いらしく、本人たちは認めないが、幼馴染みメンバーの中でも特に仲が良い。
「そう言えば、さつきから聞いたんだけど大輝が警察官やってるってホント?」
「あ?あー、まーな」
「うっそだー!」
「ウソついてどーすんだよ。つか、オレより紫原だろ」
大輝が親指で示した紫原敦は我関せずといった様子で、1人黙々とデザートを頬張っていた。
や、フライングしすぎでしょ。
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