「ルールはさっき言った通りよ!これもれっきとしたトレーニングだから手を抜かないようにね!」


そう高らかに告げるカントクの声に、誠凛バスケ部メンバーは手元の武器を横目に溜め息を吐いた。

幼稚園児や小学生ならまだしも、高校生にもなってコレ───水鉄砲で本気で遊ぶことになろうとは思ってもみなかったのだ。

ご丁寧に用意された、並々と水が張っているビニールプールが空になるまでこの遊び、否トレーニングが続くかと思うと自然と足が重くなる。

───ただ1人を除いては。


「なあ、リコ。リコと名前も参加するのか?」


そう問う木吉の視線の先には、ビニールプールに立て掛けられている手の込んだ水鉄砲が2丁。

部員たちの手にあるものより倍近く大きくはるかに精巧なそれは、もはや水鉄砲というよりはウォーターガンと横文字にする方が相応しいような風格があった。


「参加っていうか、審判とでも言えばいいのかしら。私たちがいるときにサボってたりしたらどうなるか…わかってるわよね?」

「私たちに撃たれたらペナルティーになっちゃうから、皆全力で遊ぼうね!」

((いやだから遊びなのかトレーニングなのか、天国なのか地獄なのかよくわからないんですけど!?))


部員たちの声なき声が重なる。

しかしそんな彼らの胸中は報われぬまま、誠凛バスケ部耐久水鉄砲合戦の火蓋が切って落とされた。

部員たちは一斉に駆け出し、スタート地点の体育館から安全な地を求め消えていく。


「さあ名前、私たちもこれから暫く気を抜けないわよ」

「うん!景虎さんが用意してくれたこれも使わないとね」


この水鉄砲合戦のルールは至って簡単だ。

部員全員に水鉄砲が支給されており、とりあえずそれで互いを撃ちまくればいいのである。

どこぞのバラエティー番組のように的があるわけではないので、完全個人戦でとりあえず見つけた部員を手当たり次第に撃てばいいのだ。

───体育館に設置された、水補給用のプールが空になるまで。

何時間かかるか分からないが、その間集中力を切らさぬよう体力の限界まで走り回ってひたすら撃つ。

別に部員を撃たなくても構わない話ではあるが、そこは暑い夏を乗り切るためのご愛嬌、つまり遊びとトレーニングを都合よく融合させたプチイベントなのだ。

集中力や脚力、体力の強化だけが目的というわけではないのである。


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