真っ青に晴れ渡る空に、それとはまた違った青に染まる海。
白い砂浜は、夏の海らしく沢山の人で賑わっている。
「やっぱ混んでるっスねー」
「あついー」
「さっさと泳ごーぜ」
「皆さんで行ってきてください。荷物見てます」
「交代で行けばいいだろう」
「羽目を外すなよ」
そんな海へやってきた少年少女たちは、既に水着姿で準備万端。
せっせとパラソルを立てる眩しいばかりにカラフルな面々は、ごった返す砂浜でも色々な意味で一際目立っていた。
「あ、ごめん。私一旦戻るね。忘れ物しちゃった」
「ついてこっか?」
「大丈夫。ありがとう、さつき」
桃色の少女の申し出を断ると、名前は照りつける太陽に体力を奪われつつ、今来たばかりの道を駆け戻る。
忘れ物といっても、着替える前に寄ったトイレに予備の日焼け止めを置き忘れただけなのだが、この日差しだとその小さな忘れ物が明日からの明暗を分けそうだ。
「あ、あった」
準備に余念がない女性陣で混雑している広い手洗いの一角に、日焼け止めはポツンと取り残されていた。
これで少しは安心だと、名前が安堵の息を漏らしながら場を離れたその時───
「………私、どっちから来たっけ?」
別の意味で明暗が分かれてしまったようである。
右を見れば出店、左を見ても出店、確かに先程も出店はあったが、見覚えがあるようなないような。
「あれー?」
前はごった返す人と砂浜と海、後ろは言わずもがなお手洗い。
きょろきょろと忙しなく辺りを見渡すも、どの景色もピンとくるものではなかった。
「もしかして、トイレの入口複数あったとか…?」
かなり広い手洗いであったし、もしそうであれば見覚えのないところに出てしまったのも納得出来る。
「あ、待ってお姉さん」
「!?」
もう一度トイレからスタートしようと引き返しかけた名前だったが、不意に肘を引かれつんのめった。
慌てて振り返った腕の先には、困り顔のイケメンが。
名前の知り合いにイケメンはいるが、目の前の彼は初めましてのイケメンである。
しかも少々タイプな顔立ちの。
「あの、私に何か…?」
「いや、さっきから困ってるみたいだったから…」
そう言って苦笑してみせる彼は、名前より少し年上のようだった。
挙動不審な姿を見られていたのかと思うと、羞恥心から顔に熱が集まる。
「そのっ…大丈夫です!すみません、ありがとうございます」
「俺が勝手に声かけただけだし…はぐれたの?」
「まあ…そんな感じです」
曖昧に濁すも、それは肯定しているようなものだ。
しかし目の前の彼は気にした様子もなく、"そっか"と笑みを返す。
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