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見知った通りを進み、見知った角を曲がる。

部活帰りにも寄ったことのある行きつけのコンビニの前を過ぎて、地域民の憩いの場であるらしい緑豊かな小さめの公園へ辿り着いたとき、漸く伊月の足が止まった。

名前の腕からそっと手を離してベンチへ腰を下ろすと、端正な顔立ちを歪めた彼は大きく溜め息を吐く。


「…ごめん、いきなり。こうでもしないと話せそうになかったから」


促されるまま隣へ腰掛けた名前は、息を飲むとゆっくり頭を振った。


「いえ、何て言うか、その…仰る通りだったかもしれないんで」

「やっぱり。避けられてるんだろうなって思ってたんだ。正直、俺が避けたときもあるけど」


名前の胸がちくりと痛む。

針を刺したかのような細い鋭い痛みは、次の瞬間霧のようにどんどん広がっていった。

伊月がこれから口にすることは、十中八九今一番名前の中でネックとなっていることについてだろう。

誰の目にも触れることがないよう、胸の奥底へ封じることが出来るのなら、今頃気楽に帰路を共にしていたかもしれない。

だが名前にも彼にも、それは出来なかったのだ。


「いい言葉が見付からないんだけど……嫉妬してたみたいなんだ。そんな資格もないのに」

「嫉妬…?」


飛び出してきた思いがけない単語に、名前は瞳を瞬かせた。

伊月に聞こえそうな程喧しく脈打ち出す鼓動が、期待と不安を同時に煽っていく。


「俺が勝手に名字と仲が良いって思い込んで、勝手に嫉妬してただけだから」


頭の中は真っ白だというのに、名前の手は小刻みに震え始めた。

頭は追い付いていないが、体は反射的に都合よく解釈したようだ。


「私も、先輩とは仲良くさせてもらってると勝手に思ってました…けど…えっと…え?」


いくら口を開けども、上手く言葉が出てこない。

期待と不安にプラスされた焦りだけが募っていき、次第に顔が熱を帯び始める。

それがまた緊張へと繋がったせいで名前の中がぐるぐると渦を巻き始めた頃、温かな手が優しく慈しむように髪を梳いた。


「ありがとう。もういいよ、勝手に自惚れとくから」

「先輩…」


暗がりでも分かる程、揺れ動く名前の頬は赤らんでいる。


「今は部活で手一杯だからそれらしいことは出来ないと思う。それでもいいって思ってくれて、俺のこと少しでもいいように思ってくれてるなら、これからも見えるところにいてほしい」


後押しするかのように吹いた風が、公園を囲うように植えられた木々を撫ぜていった。


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