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「今日もちょっと話が出ましたけど、鷲の目ってどんな風に見えてるんですか?」


帰り支度を済ませた面々が順に帰路につく中、自宅が同じ方向にある伊月と名前は同じ道を歩いていた。

身長差のせいか、はたまた先輩と下校するという遠慮からか、名前が半歩後ろからついていくような形だ。


「説明しづらいけど…『鷲の目』って表現は近いと思う」

「地図見るの得意そうですね」

「苦手じゃないかな。…ハッ、チーズで書く地図…キタコレ」


分かるような分からないような、この場に日向がいたなら「だまれ」とツッコんだだろうダジャレに満足げな伊月だったが、次の瞬間顔色を変えると、慌てて名前の腕を引きながら体を捻った。


「…!?」


その勢いのまま伊月の胸へダイブした名前の背後を、遠慮なく猛スピードでバイクが走り去っていく。


「あっぶねー…」


見る見るうちに小さくなっていくバイクを眺めながら、伊月は名前の背に添えていた手を離した。

温かい腕の中から解放され、様々な意味でがちがちに固まってしまった名前も、目を瞬かせて伊月の視線の先を追う。

すると視線を感じたのか彼が振り返り、2人の視線が搗ち合った。


「大丈夫?」

「あ、はい大丈夫です!ありがとうございました」


名前は急激に熱を持ち出した頬を隠すように、勢いよく頭を下げた。

少し前を歩いていた伊月が、後ろから猛スピードで突っ込んできたバイクから自分を守るために腕を引いて抱き留めてくれたのだと思うと、嬉しいやら恥ずかしいやら申し訳ないやらで体温は上がる一方である。

キャパオーバーのせいで名前の目に何故か涙が浮かび始めた頃、伊月から返ってきたのは予想外の言葉だった。


「ごめん、最初から俺がこっち側歩いとくべきだったな」


優しく名前の肩を押し、伊月は立ち位置を入れ替える。

元々車道と歩道の区別がない通りではあるが、名前を内側へ、そして自身が外側の車道側を歩くよう仕向けたのだ。


「名字に何かあってからじゃ遅いし。とりあえず怪我がないなら良かった」


口角を僅かに上げて微笑んでみせた伊月は、慰めるかのように名前の頭を一撫でしてから歩き始めた。

何も言えず何も出来ず、熱い氷浸けとなった名前は暫し先輩の背を見送るしか出来ない。

胸の中心は煩い程激しく音を立てて全身に血液を送っているというのに、彼の声しか耳に入らず彼の姿しか目に入らず、それでいて磔にされたかの如く手足は動かないのである。


「イケメンは何をしてもイケメン…」


やっとの思いで吐き出されたその言葉は、ジョークとはかけ離れた本音だった。


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テーマ「人外ファンタジー」
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