5 days
5日目、月曜日。
アレンは今日授業が朝から入っているらしく、大学にいった。
「………」
うん、暇だ。
今までずっとアレンがいたからかな。
いざ、こう一人部屋に残されると………暇だ。
リモコンでテレビをつけてみたけれど、たいした番組はやってなくて消した。
ごろり、
ごろり、
ソファの上をごろごろと転がってみる。
……………ひま。
はやく、アレン帰ってこないかなぁ…
特にすることもなく目を閉じた。
―
ガチャ、
ドアの開いた音に気付いて薄く目を開くと、笑顔のアレンに頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「ただいま、ナノ」
「、ニャ」
おかえり、アレン。と言ったつもり。
時計を見ると、もう夕方だった。
わ、あたしこんなに寝たのか。
お腹へったな、と思ったらこんな時間、そりゃ腹もへるわな。
猫になってから、行動パターンがアレンとまったりするか寝るか食べるかの3パターンしかない。
「今日は何作ろうかなぁ…」
料理雑誌をパラパラするアレン。
今時、自炊する男の子も珍しい。
アレンはきっと食べることも作ることも好きなんだ。
あ、このペペロンチーノおいしそう。
アレン、今日はこれにしよう。
ぺし、
と、おいしそうなペペロンチーノが載ったページを足で押さえる。
「………これがいいの?」
「ニャ、」
「…ペペロンチーノか。」
「ニャ、」
「あんまりそういう気分じゃ、ぶ」
足をアレンの顔に押しつける。
「…ペペロンチーノにしようか。」
「ニャ!」
ちなみに最近はキャッツフーよりも普通にアレンの食べてる料理を食べるようになった。
猫になっても味覚の変化はあまり感じないから、あたしはこっちのほうがいい。
まぁ、臭い的にダメっぽいのは(ネギとかね)避けてるけど。
今日のメニューを決めたらしいアレンは鼻歌を歌いながら料理を始めた。
そしてあたしはそんなアレンを眺める。
いつの間にかこれが日常になっていた。
ぱち、
と目が合えば、前は逸らしていた視線。
今は、ぴょん、とソファを降りてキッチンのアレンに擦り寄る。
「ちょ、ナノ。危ないからあっち」
「ニャー」
困ったように、でも少し嬉しそうにアレンが言うから仕方なく離れる。
しっぽをふりふり、アレンを待つ。
すると、しっぽを突然わしっと掴まれた。
「!!!」
「ふはっ、ごめん。しっぽは敏感なんだっけ。…ははは!すごいびっくりした顔してる」
「……」
笑うアレンを睨みつけると、笑いながらごめんと悪びれもなく言ってきた。
こんにゃろう、なめやがって。
「ンナ゛ァー!」
「うわ!オッサンみたいな声だした!」
お、オッサンて!
けっこうショックだなこれ。
「ナノってオッサン猫だったんですね。」
楽しそうなアレン。
なんだよオッサン猫って。
聞いたことねぇよ。
「さ、食べましょうか、オッサン猫。」
アレンの言葉にぶすっ、としたあたしの顔を見て楽しそうに笑う。
なんて奴だ。
―
食後、いつものようにテレビを見ながらアレンの膝に収まってまったりする。
すると、
プルルルル………
アレンの携帯がなった。
…電話?
アレンは携帯に表示されている相手を見てから電話をとる。
「もしもし、どうしたんですか?」
はい、はい、そうなんですか?
アレンが出すのは相づち的なのばっかで話の内容は見えない。
けど、気付いちゃった。
電話の相手、おんなのひとだ。
かすかに電話から漏れる、男にしては高い声。
かのじょかな、
実はちょっと勝手なイメージでアレンは彼女いないって決め付けてた。
けど、本当にそれは勝手なイメージにしかすぎないわけで、
アレンにだって彼女の一人や二人いたって決しておかしくないのだ。
いや、二人いたらおかしいか。
嫌だな、ここにいたくないや。
彼女って決まったわけじゃないけど、
猫のあたしにも人間のあたしにも関係ないことなのにね。
はぁ、ベットにいこうかな…
「え?いや、まぁ……………………好きですけど、」
、
あー、聞きたくなかったな。
うずまくもやもやが心の中を侵食していく、
心臓痛くなってきた。
あたし、いつの間にこんなにアレンが好きになってたんだろう?
心臓がいたい、
くるしい、
ああ、
猫になんて、なりたくなかったよ。
電話するアレンを残して、ひとつの決意を胸にあたしは布団にもぐりこんだ。
20110328