3 days

ぅ………、む………



3日目の朝がきた。

テレビでめざ○しどようびがやってて、今日が土曜日ってことを知った。



結局、夢見れなかったな…
うっかり熟睡しちゃったよ。

くぁ、とあくびをひとつしてからキッチンを見ると

カチャカチャ音をたてて、アレンが鼻歌を歌いながら料理していた。

朝からご機嫌だな、
こんな楽しそうなアレン見たことありませんよ。

じー、とソファからアレンを見つめていると不意に、ぱち、と合った視線。

したら、アレンはそりゃもう以前の最悪なイメージを覆す勢いの、なんていうか、やわらかいっていうか、優しい優しい笑顔をした。

…ぷい、と視線を逸らしてしまう。

アレン、猫好きなのかな。
まぁ、好きじゃないと連れ帰らないか…。
アレンとはケンカ以外したことなかったからな、アレンのこと何も知らないなそういえば。
意外に動物好きなんだな。

冷ややかな顔しか見たことなかったから、あの顔しかできないのかと思ってましたよ。
好きなものにはちゃんとあんな顔もできるんですね、アレン・ウォーカー。

ことん、とテーブルの上に置かれた朝ご飯。
昨日と同じ、手作りキャッツフー。
そして隣にはアレンの朝食と思われる大量のパンと大量のおかず。
牛乳1本もある。

食堂でよく会うから知ってたけど、本当に大食漢なんだな…。
見てるこっちが既にお腹いっぱいだよ。

もむもむとアレン作のキャッツフーを食べながら思った。


食べた後、
アレンはソファの上にごろり、とクッションを枕にして寝転がるとあたしを抱き上げてアレンのお腹にのせた。

、うわぁ、やめてくれ!
こういうのは慣れてないし、お前から見たらあたしはただの拾ってきた猫かもしれないけど、意識は人間のナノなんだよ!!
つまり、その拾ってくれたことには感謝してるけど、アレンのことは人間のときから苦手なわけで、だから、もう!
とにかく例え猫の姿であっちがあたしに気付いてなかろうが、イチャコラしたくないんだよ離せばか!

そう思って全力で拒絶しようとしてんのに、アレンはがっちり手で押さえてきてて………いててて、ちょ、アレンさん押さえすぎ押さえすぎ!
苦しい!さっき食べたキャッツフーがリバースしちゃうよオエ。
分かりました、逃げませんからもう!
だからその手を離して…オエ、

逃げることを諦めたら、アレンの手はふっ、と軽くなった。




………ハッハッハ、油断したなアレン・ウォーカー!
今だ逃げろー!




ギュッ






……オエ、すみませんでした。
もう二度と逃げません。


本当に諦めて、アレンを見上げると


また笑ってやがる、


ものっそい嬉しそうに。
なに?ドS?
猫いじめて楽しいのキミ。

ぶすっ、とした顔をしてやると背中とか頭とか顎を撫でられた。
う、きもいちい。

「かわいーね、きみ」
「ニャ、」
「同じ名前でもどっかの豚さんとは大違いだ。」

うおぉい、いるぞその豚がここに。
ちゃんと聞いてるぞ。


「……ナノ、かわいい。」


う、


いや、わーってますよ!?
この"かわいい。"はあたしだけど人間のあたしに向けられてるもんじゃないってことは了承済みですよ、ええ。


…………まぁ、しょーじきいうと、ちょっとばかしときめきましたが。




スゥ、



という息の音でアレン眠ったのが分かった。



テレビから流れるのはお天気お姉さんの声、

どうやら今日は晴れらしい。

窓から入る太陽の日差しはぽかぽかとあったかくて、

ついでにアレンのお腹と背にのっかってる手もなかなかあったかくて、

ゆっくり流れる休日の朝の時間に乗じてあたしも目をとじてみた。














『ウフフフフ…………』



なに、

なんだ?

………このふわふわしたかんじは、

いつだったか見た夢でかんじたやつだ。

そしてやたら特徴的なその声。




『やっぱり、』

『お久しぶりでス』

『お久しぶりじゃねーよ!なんてことしてくれてんの!』

『あなたの願いを叶えたのですガ?』

『いや、まあそうなんだけど…とにかく今すぐ元に戻して!』

『今すぐには無理でス。』

『は?』

『一つ目の願いごとが叶うまで二つ目は叶えられないのでス』

『え…は…?意味わかんないんだけど、』

『我輩はあなたの"ちょっとだけネコになりたい"という願いの"ちょっとだけ"を一週間と判断しましタ。つまりあなたはあと5日間は猫のままでいなければなりまセン。』

『いつかかん……』

『そうでス。5日経てばあなたは元の人間の姿に戻りまス。』

『…本当に?』

『本当でス』




疑いの眼差しを向けるあたしにおじさんはニヤリと怪しく笑って、残りの猫としての5日間を楽しんでくださイと残して消えていった。


そしてあたしも意識が途切れた、












ぱち、


目を覚ますと変わらない体勢、つまりあたしはアレンのお腹の上でアレンに撫でられていた。
アレンは自分のもう片方の腕を枕にしてテレビを見ていた。


5日間か……………


家に戻っても食べ物とかなんもないから買わなきゃだしな、
けど猫じゃ買えないし、
うちの暖房今壊れてるから寒いし、


だから……もうちょっとここにいようかな。




なんて、本当は食べ物だって冷蔵庫の中にソーセージくらいはあるし、暖房だって壊れててもふとんにくるまってればいい話。

…全部みっともない言い訳。

けど、そんなみっともない言い訳を自分についてまでもここにいたい理由



アレンを見上げると、ん?と軽く首を傾げてこちらを見てきたアレン。

ちょっと、きゅん。




うすうす分かってる、自分のことだもん。

けど、自分の気持ちを認めまいとする変な意地がはたらいちゃって、



けど、それ以上にむくむくおっきくなりつつあるこの気持ちもあって、








どきどき、

あぁもう心臓うるさい。








なんだあたし、

こんな惚れっぽかったっけ?







20110328

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