2 days

多分、朝がきた。

太陽は厚い雲に覆われてしまって見えないけれど、多分夜が明けた。
昨日から雨が降り続いている。


体が重い。
立ち上がることさえしんどい。
雨にさらされて寒い。
お腹がすきすぎて痛い。

なんであたしが、
なんであたしがこんな目にあわなきゃいけないんだ。
やだな、絶望的すぎて涙でてきたよ。
もう本当やだ、

ゆっくり目を閉じようとしたその時、

あたしの頭上で突然雨が止んだ。

薄く目を開くと誰かが段ボールの前でしゃがみ、あたしが濡れないように傘をさしていていた。


ああ、そうか。
雨が止んだと思ったら、この人が傘をさしてくれたのか。
心優しい人もいるもんだな、

その人はあたしの頭や首を撫でると、首輪を発見すると首輪に刻んであった名前を確認した。

『…【nano】……ナノっていうの?君』


そうだよ、
ねぇ助けて、寒くて痛くてたまらないんだよ。
声にならない声で伝えようと試みるけど、伝わるはずもなく…


………て、え?


ふわりと浮く体。
すっぽりと腕につつまれた。


連れていかれるのかな、あたし。
…殺されちゃうのかな、
まぁ、ここにいたら嫌でもいつか餓死しちゃうだろうし少しでも生きる可能性のあるこっちに行ったほうがいいだろう。

衰弱した体だけど妙に冷静な頭でそう思った。







白い小綺麗なマンション。

部屋の中もやっぱり外見同様小綺麗で、いや部屋主がきっと綺麗好きなんだろう。
すごい、男の人なのにあたしの汚乱した部屋とは大違いだ。

部屋に入るなり、あたしは風呂場にそのまま持っていかれて、わしゃわしゃと体を洗われた。
柔軟剤たっぷりのいい匂いのするタオルでごしごしとしっかり拭かれると、部屋のソファにぽす、と置かれた。
部屋主はそのまま風呂場に戻っていったので、彼自身もシャワーを浴びるみたいだ。

あたたかい部屋でちょっと体力回復。
キョロキョロと部屋の中を見渡す。
シンプルな部屋だな、物少ない…。
あ、けど本はいっぱいあるんだ…

ひとしきり部屋を観察したけど、探検する気にはなれず(お腹減りすぎて動きたくなかった)こてん、と眠りについた。




ガチャ、

浅い眠りの中でお風呂場のドアが開く音で目が覚めた。

上がったのかな、





………………って!!!!





お風呂場から出てきたのはあろうことか、





アレン・ウォーカー!!!






やっべ、今初めてちゃんと顔確認して気付いたよ、こいつアレンじゃん。
ていうか、






パンイチ!!!






ちゃんと服きろよアレン・ウォーカー!
バカヤロー嫁入り前の娘の前でパンイチでうろちょろすんじゃねーっ!


…………………まぁ、いい体してるとは思いますけど…


なんだあたし変態みたいだな。



ようやくスウェット下にTシャツという姿に落ち着いたアレン。
着替える間も細マッチョなアレンの体に目がいってしまって大変だった。
ちくしょーアレンのくせに。


もんもんとしていると、目の前に出された………キャッツフー(cat food)?
え、なにこれ、買いに行った様子もないし、アレンが作ったの?
キャットフードってご家庭で作れるもんなの?
キャットフードにしてはやたらおいしそうなソレ。
あたしはもぐもぐと食べ始めた。



うま〜*~゚



アレンってお料理上手だったのか。
おいしさに頬が緩む、幸せだ。
そしたらアレンに頭をよしよしと撫でられた。

「………………」


複雑だ。
天敵だったのに、
豚だの牛だと鶏だの(つまり肉)と言われてきたのに、
純白腹黒もやしなのに、
ひどく優しく笑いかけてくるもんだから不覚にもときめいてしまった。
GAPってやつかな、
ま、この猫の正体があたしって分かったら殴られ蹴られるだろうけど。

大人しく撫でられていると、不意に持ち上げられてアレンの膝に乗せられた。




ギャーッ!




そ、それはいかんよアレン!
慌ててアレンの膝から抜け出して、ソファ下に降りてフーッ!とアレンを威嚇した。
例え動物の姿だろうと今のはだめだ!うん、だめだ。

アレンは少し驚いた顔をすると、優しく頭を撫でてきた。

「ごめんね。もうしないから、おいで?」

ぽんぽん、とアレンの座るソファの横を叩くアレン。
あたしはおずおずとソファに戻った。
くるり、と体を丸める。
すると、アレンが顎を指でぐしぐしと撫でる。
、きもちい
これもなかなか照れくさいけど。







その日の夜はアレンのベットに招かれたけど、なんとか逃げてソファで丸まった。

まさかアレンに拾われるだなんて、せめてラビとかだったらな。
アレンの優しさは拾ってきた猫に向けられているものであって、人間のあたしには向けられないものなのだ。
そこんとこ勘違いしないようにしなければ。
この猫があたしって分かったら、確実にアレン動物虐待始めるよ、きっと。
ああ、恐ろしや。
ま、分かることはないだろうけど。







あたしはこのまま猫として一生を過ごすのだろうか、





この姿になった時から一時も頭から離れない疑問。
なんで急にこんなことに、





あ、


ふと、思い出したいつか見た夢。
肥満なシルクハットかぶったおじさんが出てきた夢、







『願いをひとつ、叶えてあげましょウ』

『ね、がい……?』

『そうでス』

『ネコに、ちょっとだけなりたいかも………』

『了解しましタ』









こ れ だ !

絶対これ原因だよ!
何してくれてんだあのデブ!
冗談だよあんなん!
本気で猫になりたいと思うわけないだろ!
理不尽?分かってるよもう!

あああああ…
きっとあの不安定な意識の中でついあんな言葉が出てしまったのは、常に楽をしたいと考えていたからに違いない。
ごめんなさい、もう思わないよそんなこと。
だから人間に戻してくださいお願いします。

…けど、夢の中であいつに会ったっていうことは、また夢の中で会えるかもしれない。

よし!
寝よう!
そして人間に戻してもらうんだ!
おやすみ!






20110328

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