7 days 2/2



AM0:00



「…………ナノ?」


お風呂場の外からアレンの声が聞こえた。

…やばい、
体が元に戻ってしまった。
人間に戻ってしまった。
よりによって今
しかも、真っ裸。うそだろ

とりあえず、アレンが入ってこないようにお風呂場の鍵をかける。


「ナノ?」


ガチャ、ガチャガチャッ


「え?鍵?なんで鍵しまって…」

再びガチャガチャとドアノブを回し開けようとするアレン。

うわっ
やめてくれ!
鍵かかってんだから、潔く諦めろよ!
今君に会うといろいろ大変なことになってしまうんだよ、
いやぁぁあ!がちゃがちゃしないでぇぇえ!


…やばい、このままじゃいつか扉は開く。
その時の最悪の事態は避けなければならない。
そう、この裸体をさらすわけにはいかないのだ。
乙女の純情に誓って。


そして、あたしは覚悟をした。






「ちょ、アレン!」

「……………………………は、」


ドアノブのガチャガチャが一瞬で止まった。
アレンが固まったことが扉越しでもわかった。

まぁ、そりゃそうだろう。
猫が入ってると思ってたお風呂場から人間の声がしたんだもん、そりゃ固まりもしますわ。
うん、アレンくん、君が正しい。
おかしいのは明らかにあたしのほうだ。
けど、現実はこちらなんだよ。

「アレン、落ち着いて聞いて」
「だ、誰ですか…………?」
「あたし!ナノだよ!同じ大学の!」
「は……なんでナノがここにいるんですか、」
「いや、それはもっともな疑問だと思うんだけど」
「い、意味分かんないです。君、うちのお風呂で何やってんですか!?」
「違う!決して怪しいことをしたわけじゃない!!」
「じゃあ、何で君がここにいるんですか!?」
「…さっきの猫!」
「はぁ!?」
「さっきの猫、あたしなの!!」
「はぁぁぁ!?」
「本当に!」
「君いい加減にしないと本当にぶちのめしますよ!?」
「本当なんだってば!」
「僕がそんな嘘に騙されると思ってるんですか!?」


だめだ、
絶対信じないよこの人。
どうしよう…


……………そうだ!



「ちょ、とりあえずでてき、」
「"僕には、好きな人がいるんです、"」
「なに言ってんですか、早く出てください!」
「"けど、いつも素直になれなくて、冷たくしてしまうんです、そんなこと思ってないのに。"」
「………ちょ、ナノ?それはもしかして、」
「"本当はすごく心配でしょうがなかったのに、メールひとつ送るのにためらって、送ったとしても一言多い文章だし"」
「ナノ!?それ以上何もしゃべらないでください!分かりました!信じますから!」
「"リナリーにも怒られちゃいました、僕がそんなんじゃいつまでたってもだめだって。"」
「うわぁぁぁぁぁ!もうやめてください、」


さすがにアレンがかわいそうに思えて話すのを止める。
微妙な雰囲気が流れる中、アレンの言葉を待つ。


「…な、なんでナノが、そのことを知ってるんですか、」

声からアレンがだいぶ動揺していることがわかる。
そうとうびっくりしたんだろうな。

「だってあたしに話してくれたじゃん」
「…本気で言ってるんですか?」
「うん、本気」
「とりあえずちゃんと話したいので、そこから出てきてもらえませんか?」
「……うん、……………………」
「…………鍵、開けてくださいよ」
「…………いや、あのね、」
「なんですか」
「…………今、服きてないんだよね」
「…は?」
「だから、今服着てないの!!」
「本当そこで何してんですか君」
「違う!!決してやましいことをしていたわけじゃない!」
「………まあ、いいです。僕のスウェット貸します。」
「ありがとう!」



・・・



ソファにどっかり座って、床に正座するあたしを見下すように見るアレン。
さっきまであんなに優しい眼差しだったのに…

「で、どういうことですか。僕が納得するまで説明してもらいますから」
「…その前にひとつ言いたいことが…」
「なんですか」
「……ノーパンノーブラ……」
「僕のボクサー貸しましょうか」
「ノーパンノーブラ大好き☆」
「はい、で?」
「ええと、どこから話したらよいのやら……」
「…いつから?」
「一週間前から」
「突然?」
「と、つぜんじゃないけど…。言ってもアレンは信じないと思う。」
「信じます、教えてください。」

あたしの目を真っ直ぐ見て言うアレン。
その目からはアレンの本気が感じられて、

唇を少し噛み締めてから、あたしは一週間前の夜に見た夢のことを話した。







アレンはあたしの話に目を見張った。

「…はは、信じられないよね。」
「……その夢に出てきたおじさんは、眼鏡をかけて傘を持っていましたか?」
「そ、う!!なんで、アレン知ってるの!?」
「…いや、噂で聞いただけです。」
「…そっか、」
「けどナノのことは信じます。」

アレンの言葉に今度はあたしが目を見張る。

「信じてくれるの?」
「はい」
「あ、りがとう…」

こんな話誰も信じてくれないかと思ってた…
嬉しさにちょっと泣きそうになってると、アレンが両手で顔を覆って俯いた。

「アレン?何、どうかした?」
「いや、何も」
「何もないようには見えませんが。」
「…だって、君は猫だったわけでしょう?」
「まぁ、」
「…僕、気付かずにいろいろしちゃったなって思って」

言われて思い出すのは、アレンの膝にのせられたり、一緒にベットで寝たりといったイチャイチャ行為の一部始終。


「「…………」」


うっ、わ…
は、恥ずかしい………!
お互い恥ずかしい!!


「「……………」」


耐えきれないこの沈黙…!

なんか話題話題話題話題………
…あ、そうだ。
まず、アレンに言わなきゃいけないことがあった。

「アレン」
「…なんですか」

よっぽど恥ずかしかったのかまだ顔を両手で覆っているアレン。
指の間からちらりとこちらを見てきた。
ちょっとその格好がおもしろくて頬が緩む。


「あたしを拾ってくれて、助けてくれて、ありがとう」
「…」
「アレンに助けて助けてもらえなかったら、あたし多分死んでた」
「…」
「本当にありがとう」
「…いえ、」

ようやく両手を顔から外すアレン。

そして、あたしはアレンを真っ直ぐ見て、ずっと気になっていたことを聞く。

「ねぇ、アレン」
「何ですか?」
「アレンってあたしのこと好きなの?」
「んなっ、!」

予想外の質問だったんだろう、目を見開いて驚いたアレンは顔を赤くしたまま、照れくさそうに視線をななめ下に落としてぼそぼそと話す。

「…………まぁ………す、きですけど……」
「そ、そっか」

自分が聞いたくせに、なんだか恥ずかしくなっちゃって、あたしも視線を落とす。

「……そーゆーナノも、すごく嬉しそうですけど」

照れくさそうに顔を赤くして、けどちょっと嬉しそうにアレンがそう言って見つめてきて初めてあたしの頬もそうとう緩んでいることに気付いた。

「……あは、」

照れ隠しにへら、と笑ってみたけど、アレンは黙ってあたしを見つめるから、どうしていいのかわからなくなっちゃって、ついには俯いてしまった。

「…床に座るのもなんですから、ここ座ったらどうですか?」

そんなあたしにアレンはソファのアレンが座っている横をぽんぽん、とたたく。
おずおずとそこに座る。


「…ナノ、」
「な、に」
「もう一回、ちゃんと告白したいんですけど、いいですか?」
「…どうぞ、お、おかまいなく」
「ふは、じゃ、」

そう言ってあたしと向き直るアレン。

さっきまで真っ赤だったくせに、いや今も少し赤いけど、いつものような優しい眼差しであたしを見るアレン。
その優しい眼差しからは、恥ずかしいけどあたしのことを愛しい、って思う気持ちを心臓が痛いくらいに感じちゃって、

「ナノ、」
「は、い」
「僕はずっと、君に伝えたかったことがあります。」


そうあたしの目を見て言うと、あたしの横髪をなでるアレン。

恥ずかしくって、心臓がくすぐったくて、ちょっと首をすくめてしまう。

そんなあたしを見て、ふは、と笑うアレン。

その笑顔に、胸がきゅん、としちゃうあたしはそうとうアレンに惚れてるようだ。


「ずっと、ずっと触れたいって思ってた。」

「…う、ん」

「でも僕は、素直じゃないから」

「…うん、」

「思ってもないことばっかり言っちゃって」

「…うん、」

「…けど、やっと言える。」

「………うん、」





「ナノ、大好きです。」






アレンが滲んで見える
あたし泣いてるのか、

アレンが泣いてるあたしの涙を呆れたように笑って、指でぬぐうとそのまま抱き締めた。
後ろ頭をぽんぽんとされる。


「なんで泣くんですか」
「う、だって、」
「返事、聞かせてくれないんですか?」
「え、言うの?」
「当たり前じゃないですか」
「………」

アレンがあたしの言葉を待ってるのが分かる。

張り詰めたような沈黙に、心臓は甘く激しく高鳴って、とんでもない恥ずかさとか、照れくささがあたしを邪魔する。



けど、胸に、じんじん感じるのは、アレンへが愛しいって気持ち。





ぎゅう、とアレンの背中に回す手に力を入れる。






「あたしも、すきだよ」






「うん、しってる」
「おい、雰囲気大切にして。それに知ってるなら言わせるなよ」
「僕が言って君が言わないなんてずるいです」
「…それもそうか」
「………それで、」
「うん?」
「この体勢はちょっと僕の心臓に悪いです」
「…は?」
「胸、意外とあるんですね」
「……!」

ぎゃー!
ノーパンノーブラ忘れてた!!

離せ、と言ってアレンの胸を突っぱねて離れようとするけど、ぼす、とまたアレンの胸の中に収められた。

「ちょっと、!」

怒って胸の中からアレンを見上げると、




ち、ちか!




アレンとは鼻がくっつくくらいの距離。

あわあわしてるあたしを見て、アレンは片方の口角をあげて、にやりと笑う、あ、かっこいい…
じゃなくて!!


「ちょ、アレン!」
「キスくらい、させてくれないんですか?」
「、んな!」
「それ以上はまだ我慢しますから。」
「まだって…!てか、ちょまって!心の準備が!」
「ん、もう無理」
「ちょ、アレ、んっ…」



瞬間、食べられた唇。

胸がどきどき、壊れそう。





唇が離れれば、いつもの優しいアレンと目があう。





「ナノ、愛してる」










20110401


「………勢いでエッチに持っていこうとすんなよ」
「えへ、ばれました?」

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