「な、何。」 今の状態を説明すると、背中は壁、両側はアレンの腕によって包囲されている。 まぁ、所謂全国の乙女が憧れるあの体勢である。 だがしかし、まったくときめかない(むしろ恐怖)なのはコイツがひどく見下した目をしているからだろう。 「はぁー…」 「人の顔を見てため息つかないでいただけますか。」 「はぁー…」 「…」 反抗するようにキッと見上げながら睨むと、またため息つきやがった。 一体なんなんだ。 新手の嫌がらせ? すると、突然あたしから目を離してうなだれるアレン。 「……‥‥」 「え!?何?」 なんかボソボソ言ってるみたいだけど、よくわからない。 なんか今日は調子狂うなぁ。 「…あなたがいなかったらですね、」 「は?」 「僕はリナリーとくっついてたんですよ、あなたがいなかったら。」 「は?」 なんであたしがリナリーとうまくいかない原因にされないといけないんだ。 まったくの謎である。 それに、 "あなたがいなかったら" って、 うわ、なんか改めて考えたら悲しくなってきた。 アレンにとってあたしはいない方がいい存在だったのか、 まぁ、確かに顔合わせる度にケンカしてるからそうも思うかもしんないけど、あたしは…いいケンカ友達なんて思ってたんだけどな。 アレンの解せない発言に言い返したい気持ちだったけど、なんだか本当に落ち込んでるっぽいから、いちおうその気持ちはしまっといた。 「…アレン、がんばればいいじゃん。リナリーはアレンのこと悪く思ってないと思うよ。」 うなだれたままのアレンの頭にむかって言う。 けど、アレンは無反応。 …いや、またため息ついてる! なんなんだ、もう! しばらくの沈黙。 けど、アレンの小さなつぶやきが沈黙にぽつりと浮かぶ。 「………名前は、僕がリナリーとくっついたら、どう思いますか?」 …なんでまたあたしを絡めてくるんだ。 あたし関係なくね!? と、いうツッコミもしまいこんでおいた。 アレンと…リナリーがくっついたら…………… 「…………」 急に黙り込んだあたしの顔をアレンがのぞきこむ。 「名前?」 「アレンとリナリーがくっついたら、」 「…うん、」 「…リナリーがかわいそう?」 「…どういう意味ですか?」 「いや嘘!嘘だから発動といて!」 イノセンスの発動を解き、アレンはまたひとつため息をついた。 何回目… 「鈍いにもほどがあります。」 「神田が?」 「なんでこの話の流れで神田が出てくるんですか。まぁ、間違ってはいないですけど。」 「………………あたし?」 「あなた以外いないでしょう。」 「なんで?どこが?」 「こういうとこが。」 あたしの顔の横についついたアレンの手が、あたしの顎を持ち上げー……… あれ、なんだ、 アレンの顔が近づいてー…… ちゅ、 え、 「な、え、は…、」 うまく言葉が出てこない。 頭の中まっしろ、 けど、 けど! さっきのって!! 「ちゅーじゃん!」 「まぁ、そうですね」 「ちゅーしちゃった!アレンと!」 「嫌だったんですか?」 「、うえっ?」 ただでさえテンパってんのに、追い討ちをかけるようなアレンの質問に変な声が出てしまった。 さっき離れた唇がまたくっつきそうに近くなってて、固まる。 ちょ、首かしげんなっ! ちかいっ! ばくばくとせわしなく動く心臓に息が詰まりそう。 いつもあたしを見下すアレンの目が、今日はいつもと違って、なんだか吸い込まれてしまいそうな、射ぬかれてしまいそうな、熱い目で戸惑う。 どっかで気付いてたこの気持ち。 けど、見ないようにしてたこの気持ち。 けど、あたしの中のごくわずかな乙女の部分が感じてるじりじりするようなこの思い。 「…い、やじゃない。」 あたしの返事を聞いたアレンは不敵に笑って、 あれ、ちくしょー、なんだかかっこいい。 0%から100%へ、 糖度100%ラバー 20110414 [prev|next] |