“ピ ピ ピ ピ”


 白、真っ白。何処だろう此処。蛍光灯が2つ並んでる。ああ、天井か。
 ──誰もいない
 ぐるりと辺りを見渡すと、知らない場所だった。どうやら見たところ病院みたい。そして其処でベッドに酸素マスクをつけ横たわっているわたし。一体何処?何故こんなところに?頭をフル回転させて記憶をたどってみるけど、思い当たる節は無い。


“ガラガラガラ...”


「え!?」

「え?」

「あ、いえ……何でもありません」


 どういうことだろう。ドアを開けて男性が入ってきたと思ったらバクマン。の服部さんじゃないか。わたしの大好きな、漫画の。
 どうなっているんだ、本当に。いや、待てよ?もしかしたら服部さん似の別人かもしれない。あの特徴的な顔の人物が2人居るとは、考えにくいけれど。


「それじゃあ杉田さん、」

「どうしてわたしの名前…」

「学生証で確認させてもらったんだ。勝手にすまないね」

「いえ…。それでわたしはどうして此処に?」

「それを今から説明するよ。僕は服部哲だ、よろしく。座ってもいいかな?」


 わたしが「どうぞ」と答えると、服部さんはベッドのすぐ隣にあるパイプ椅子に腰掛けた。やっぱり服部さんは服部さんだった。とすればわたしは……まさか、トリップ?


*****


 詰まるところ、わたしは道端に倒れていて、それを発見した服部さんは救急車を呼んでくれたらしい。「呼吸していなかったから焦ったよ」と服部さんは言った。申し訳ないなぁと思うと共に、見知らぬ人にここまでしてくれる服部さんの優しさは、原作通りだなと思った。

 で、現在心拍数を計る機械とか酸素マスクとかがあったりする部屋にいるのだけれど、それはわたしの心臓が停止していたことと、その原因が未だにわかっていないからだそうだ。どうやら病気という線が強いみたいだけれど、そんなことは実際どうでもいい。トリップしてきたのかもしれないということは、サイコーに会えるかもしれないのだ。どうやってこの世界に来たのだとか、この世界のわたしの体が危ないだとか、そんなことよりも、一目でいいから、サイコーに会いたい。


「何か欲しいものとかあるかい?」

「あ、服部さん。わたしの鞄って知りませんか?」

「あるよ。あれだろう?」

「嗚呼良かった…。すみませんがその中に入っているお金で、ジャンプを買ってきていただけないでしょうか」

「ジャンプって…10人組アイドルグループのことか?それのCD?」

「あ、いえ、そうじゃなくて。週間少年ジャンプの方です」

「! 君も読むのかい?」

「はい!漫画は少女漫画より少年漫画が好きなので」

「そうか!わかった今すぐ買ってくるよ!」


 服部さん凄く良い笑顔で走って行っちゃったけど、わたしの鞄に目もくれなかったよ。あとでお金払わなきゃ。
 ジャンプを買ってきてもらおうというのは勿論亜城木夢叶が連載しているかどうかを確認する為で。ジャンプを読んでいるだなんて嘘をついてしまったけれど、わたしはたまに買うくらいで基本的にはコミック派。でもあの時買っているって答えなければ不自然だもの、仕方ない。


*****


「お待たせ!」

「そんなに急がなくても良かったんですけど…すみません」

「いや、僕が勝手にしただけだから気にしないでくれ。はい、これ」

「あっ表紙はCROWですか!凄い……」


 トリップ説、決定。私は本当に……来たんだ、この世界に。
 表紙はCROWでセンターカラーはTRAPだった。あとは本当にあるワンピースだとかナルトだとかその辺も一緒に掲載されていた。勿論、知らないものも。TRAP連載ってことは、PCPの前のタントの前だから…結構前か。


「服部さん、今は西暦何年ですか?」

「変なことを聞くな、2011年で間違いないが?」

「そうですか…」


 2011年って何があったっけ……くそ、もっと読み込んでおけばよかった。



に指で描いた、
はーと

ただ、サイコーと同じ空の下にいることが嬉しくて。
その指に、願いをこめた。





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