「ぎーんがの
さかな、
あいたいよ…」
窓の外は暗くて、生憎の雨だ。土砂降りでもないけれど、心が沈む。
結局、身体に何の異常も見つからない為サイコーの隣の部屋に戻された。でも、シュージンの忠告をくらってしまっては、もうサイコーの部屋になんて行けない。──最後の、日なのにね。
最後の日だとしても、いつこの世界を去るんだろう、どうやって戻るんだろう。そんなことを考えていても、意味の無いことだとはわかったいるのだけれど。
「とどかぬおもい、
とどけーたくて」
こんな気持ちを紛らわすように、わたしの好きなウタをぽつりぽつりと口ずさんだ。本当は、この一時一時を噛み締めて、悲しみに浸りたいのかもしれない。
「カワグェーテの
かみ ひこーきにー」
「何の歌?」
声だけでわかった。こんなに静かなのにドアの開閉の音がわからないほどぼうっとしていたのかな。サイコーが態々わたしの部屋に来てくれるなんて思ってもみなくて、嬉しくて振り向きたいけれど、今のわたしじゃ彼の姿を見ただけで涙が溢れてしまうだろうからそれは出来ない。
「ありったけのおもい
のせてーはなつ」
「ねえ」
「…」
振り向いていないのに、どうして涙が出るんだろう。どうしてこんなにも胸が苦しいんだろう。会うことが出来ない人と会えて、話すこともできたのよ?こんな幸せ者いるのかってくらい、幸せな、ことなのに…。
どうしてだろう。
「今までありがとう。本当に幸せだった」
振り向いてみれば、思ったより近くにサイコーがいて、それがやけに最後なんだということをリアルにしていた。案の定、涙は更に溢れ出して、わたしの足元に染みをつくった。
「な、なんで泣いて…どこか痛いところとか…そうだ、ナースコール…」
「真城さん」
「な、なに」
次の瞬間、サイコーは「あっ」と声をあげた。手の平を見てみれば床が少し見えて透けている。
「もう、お別れみたい。貴方のことは忘れない、ずっと、これからも」
そうして目の前は真っ暗になった。何処かわからないこの空間でわたしは声をあげて泣いた。この数日で一生分の涙を使い切ってしまいそうな程泣いた。ありがとうサイコー。ずっと、好きだったよ。これからもずっと、貴方が好きだよ。どうせ、彼の中からわたしは消える。そうわかっているのに好きと言えない自分が嫌いだった。
ゆめのウタをうたう
さようなら、愛した人。
Fin.
song by sasakureUK feat GUMI
カムパネルラ
120107