「という訳で、話し合いたいことがある」


 学校から帰ってきたら愁に「帰って来るなら電話しろよ」と怒られた。車を回すからだって。はっきり言って、わたしはそんなにボス扱いしてくれなくて良い。わたしより年上のファミリーの仲間もいる訳だし、わたしだけがそんなに特別扱いというか…そういうの、好きじゃないのだ。ボスという肩書きから逃げてるんじゃないのか?甘ったれんな。もう一人もわたしが叫ぶ。

 話し合い、なんて言ったっていつものメンバーが会議室に集まってるだけだ。申し訳ないが、わたしが一番信用し、頼っているのは年の近いこの2人なのだ。かと言って別に他のメンバーを嫌いに思っている訳でも、疎ましく思っている訳でもない。寧ろ愛している。勿論その感情は家族に向ける愛だが、わたしにとってファミリーは言葉の通り家族そのものだから。


『いきなり来てすまないね』

『いえいえそんなことは!』

「誰か来たみたいだな」


 扉の向こうから声が聞こえて、愁が外に出た。何やら立ち話をしているみたい。


「叔父様…!」

「久しぶりだな梨奈」

「連絡下さればお迎えに参りましたのに…」

「寄ってみただけなんだ。気にしないでくれ」

「叔父様も聞いて下さいますか?お話があるのです」

「ああ、勿論だよ」


 気になってわたしも外へ出てみれば、そこにはクラウディオ叔父様がいた。叔父様は父の弟で、普段は此処にはいないけれど仲間だ。本来ならボスは叔父様になるところを譲って下さった優しい方なのだ。
 叔父様を迎えてくれた部下にありがとうと言葉をかけ、下がってもらった。聞いてほしくないってことではないけれど、焦っているわたしを見せる訳にはいかないから。ボスがしっかりしてなかったら、ファミリーはどうなる。


「御存知の通り並盛高校にボンゴレのボス、沢田綱吉様が転校してきたのですが」

「……」


 わたしの言葉を待つように、皆がごくりと息をのむ。この話はわたし1人じゃ対処出来ないくらい、重要な話なんだ。


「単刀直入に言います。ボンゴレに吸収されないかと…」

「「!」」

「いきなりだな」

「わたしとしてはメリットの方が多いと踏んでいるのですが」

「ボンゴレの傘下に入れば、それだけで敵が減るのも事実…ということか」

「はい」

「寧ろデメリットと言われても見つかんねえな」

「強いて言えばカレゾフの歴史が大きく変わることですかね」


 そう、カレゾフのプライドのことが一番の問題なのだ。カレゾフの名前が無くなる訳じゃない。ただボンゴレの下に入るだけ。それだけのこと。でも…。終わりのないループがわたしを飲み込む。


「まあ我々が何と言おうと、最終決断を下すのはボスである梨奈、君だ。何も恐れることはないさ。皆、君についていく」

「……ありがとう、ございます」


 まるでわたしの心を見透かしたように、叔父様はわたしが今一番欲しい言葉をくれた。でもその言葉は真だろうか。本当に皆、わたしの下した決断に頷いてくれるだろうか。


「叔父様!今日は泊まっていかれますか」

「暫く此処にいるつもりだよ。いいかね?」

「勿論です。夕食はどうなさいます?」

「申し訳ないが食べてきてしまったんだ。みんなで食べてくれ」

「わかりました」


 カレゾフの建物の中で1つだけ離れた部屋がある。何故孤立するようにその部屋が離れて造られたのか、わたしは知らないけど、物心ついた頃にはもう叔父様の部屋になっていた。今でも此処に来ては叔父様はその部屋を使っている。


「で、どう思う?」

「態度変わりすぎだ、バカ」

「当たり前でしょ?叔父様なんだから」

「話が逸れてます…」

「逆に昴はどう思う?」

「ぼ、僕ですか!?」

「そうよ。話聞いてたでしょ?」


 慌てて答える昴。まさか自分は聞かれると思ってなかったとかじゃないでしょうねえ?しかも「ご飯、食べませんか?」だなんて。話が逸れてると言ったのはあなたよ。


「飯飯〜」

「ちょっと、愁!」

「話し合ったってこんな状況じゃ埒があかないだろ。落ち着こうぜ」

「落ち着いてるわよ」

「根詰めすぎ詰めすぎ。はい行くよー」


 もういいや。こいつらには勝てないわ。ご飯でも食べて、一息つこう。考えるのはそれからにしよう。




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