「あーもうわかんない!どうやったら炎が灯るって言うの!」
「ちょ、落ち着け!」
「落ち着いていられるかっ!」
「あ、つきました〜」
わたしと愁の口論の途中に緩い声が聞こえたと思ったら、なんと昴の指輪に炎が点っていた。黄色の綺麗な色だ。
「昴、どうやって…」
「うーん、こう、炎のこと考えてたらつきました」
「わたしだってさっきから…!」
「そうカッカするな、こいつは感覚派なんだよ」
「天才かっ!」
ゴージャスに飾られた指輪はわたしに応える気は無いらしく、わたしの指の上で大人しくしている。
覚悟云々言われても、わからないわよ。
「こんなんで大丈夫なのかな…」
「焦ったってしょうがないだろ」
「焦るわよ!いきなり答え出せって言われたらどうするの!?わたしは、…」
途中で言いかけて、思いとどまる。愁に当たってどうするの。わたしは頭を抱えて崩れ落ちた。灯らない指輪、カレゾフの存命。わたしを焦らせる要因は幾つだってある。
「ちょっと頭冷やしてくる」
「クラウディオには指輪のことは言うなよ」
「どうして?色々知っているかもしれないのに」
「どうしてもだ。訊けないならその指輪を置いていけ」
何で愁はわたしに命令してんのよ。少しムッとしつつも愁に従ってしまうのは、きっと慣れだと思う。
*****
少し走ろうか、なんて考えランニングマシーンの上にいる。規則正しく聞こえる足の音が軽快なリズムを刻んでいる。
わたしがこう焦ってるのも、迷ってるのも、全部全部沢田の所為なんだ。あいつがいきなりわたしの前に現れるから、いきなりボンゴレに入れだなんて言うから、トレーニングしたり、指輪を作ったり。全部あいつの所為なのよ、あいつさえいなきゃわたしは平穏な生活を送れていたのに。でも、人の所為にしてちゃなんにもならない。今はこの状況を乗り越えなきゃならないんだから。わたしの使命はただ1つ。カレゾフのみんなを守るの。それだけなんだから。
「えっ?」
左手の方から青白い光が現れていた。──そう、指輪から。
「其方の覚悟、しかと受け取った」
「あ、あなたは?」
「そのうちわかる」
フッと笑って消えた。炎の中に人影が映って、その人がそう言ったのだ。立派な髭をはやした、おじいさんだった。
111219